Jin

モリのいる場所のJinのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
3.8
“俺は何度でも生きるよ。生きるのが好きなんだ”



晩年30年間を自身の家の小さな庭の中だけで過ごした画家、熊谷守一を描いた物語。

ゆっくりのんびりとした話の中にドリフ的なコメディ要素が散りばめられる。
期待以上に面白かった。

風貌や生き方は俗世間とかけ離れ、まさに仙人そのもの。
極度の芸術家気質な老人が向き合うのは「生きるということ」。

画家の話だが、絵を描くシーンは出てこないのが面白い。あくまでその生き様、絵が生まれるまでの過程を描く。
“この庭は私には広すぎます”
庭に生きる生き物を観察し続け、見つけた小さな変化に「生」を見出す。
“よく見て。よく見て。”
たどり着いた「無一物」の境地。


セリフがいい。
「モリ」から発せられる深すぎる言葉。
“下手ですね。下手でいい。”
“写真屋というのは犬みたい”

それを支える妻の気の抜けた人間らしい人柄。やっぱり樹木希林うまいなぁ。セリフが自然すぎて笑っちゃう。

是枝作品のように淡々と「人の生活」を映し出す。
こんなにスローテンポな映画なのに飽きないのは、それに加えて音にこだわられてるからだと思う。
アリの歩く音やフクロウの瞬きまで全ての音が聞こえるから、静かなのに騒がしい「生」を感じる。
要所に出てくる音楽も楽しい。

キャストがいいから面白いし、演出やセリフも自然かつ不思議で笑えた。


死でなく生を考える老人の話っていうテーマがいいのかもしれない。