ノラネコの呑んで観るシネマ

追龍のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

追龍(2017年製作の映画)
4.3
汚職が蔓延する1960年代の香港。
ひょんなことから友情で結ばれ、裏社会でのし上がるドニー・イェンと、警察トップを目指し出世してゆくアンディ・ラウの実話ベースの物語。
彼らは表と裏から犯罪を仕切り、共に巨万の富を築いてゆく。
とにかく、二大スターが同じ画面の中にいるだけで眼福。
当時の香港の再現も見所。
今はなき九龍城砦をかすめる様に、旧香港空港へとジャンボ機が降りてゆく。
実際香港に行った時、低過ぎてぶつかるんじゃないかとビビったことを思い出した。
よく事故が起きなかったものだよ。
もちろん先の見えない物語の面白さと、迷宮の様なカオスの街で繰り広げるられるアクションも見応えたっぷり。
ある種のピカレスクロマンなんだが、登場人物の動機のベースにあるのはチャイナナショナリズム。
どこまで出世しても、いくら稼いでも、決してトップには辿り着けない。
結局支配者である英国人に生殺与奪の権を握られ、彼らの手のひらで踊らされているにすぎない植民地人の悲哀。
だからもの悲しくも痛快な話ではあるのだが、今の香港を見ると複雑な気分になる。
英国人が去っても、今度は北京の手のひらにかわっただけで、永遠に支配される。
これ本国公開は2017年なんだけど、この3年間の情勢の変化が、図らずも本作にも違う意味を与えることになった。