ジャン黒糖

ターミネーター ニュー・フェイトのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

3.4
公開当時「あの『T2』の正当な続編!」という、シリーズ3〜5作目を完全になかったことにする強烈な宣伝文句によってシリーズファンからツッコミくらった本作。
(ちなみに一応の前作にあたる『〜新起動/ジェニシス』は続編というより"リブート"でした笑)

その名作、『T2』以来となるサラ・コナー役リンダ・ハミルトンが出演したことでも話題に。

正直米国での興行、評価のなんとも言えない結果を受けて劇場で観なくてもいいかと断念してたのですが、レンタルにて遂に鑑賞。

個人的にはこれ、T2の正当な続編と言われると否定したくもなるけど"ターミネーター・マルチ・ユニバースもの"と勝手に銘打つと「なるほどこんな展開があったか!」とわりと楽しめた笑
というのも、作品群では前作にあたる『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のときにもシリーズ創造主ジェームズ・キャメロンが「これが自分にとってのシリーズ3作目さ」と、公開当時語っており(この発言はまだYouTubeにも残ってます)、こういったキャメロンの太鼓判発言をそもそもあまり信じてないんですよね笑

また、これまでの作品群を以下、簡単にまとめると、
1作目:すべての物語の始まり。
2作目:前作の続き、そして逆張りとして"もしもT-800がいい奴だったら"。
3作目:前作までの続き、そして審判の日が描かれる。
4作目:前作までの続き、そしてこれまで語られてきた人類vs機械戦争が遂に描かれる。
5作目:そもそもの1作目を覆す"もしも1作目で起きる出来事すべて把握したタイムラインが存在していたら"
というように、2作目以降すべて1作目で描かれてこなかった余白、語り切れなかった魅力を増幅、拡張させていくことでシリーズが成り立っていたことがわかる。

特に1作目で語られた審判の日、機械戦争自体は3,4作目で描き切ってしまったことで、文字通りシリーズ時系列の延長戦で語れる余白が無くなってしまった。
そうなるとあとは歴史が書き換えられたコトによって変化する未来、という"もしも"話でしか物語を語ることができないが、実はそれも2作目で既にやってしまっている。
となると、5作目以降はこの"もしも"具合をいかに楽しむか、に依存せざるを得なくなる。

そのため、新作が公開される度に評判が低いと「結局、キャメロンに監督してもらわないと」と批判するレビューも散見されるが、そもそもシリーズ続編として語るべき要素自体が無くなってしまったので個人的には「キャメロンでも無理じゃん?」って薄々思っているところがあり、『〜ニューフェイト』になって急に正当な続編といわれても、とシコリ残る。
なんなら、2作目で根本的に未来を救ったことで"未来の救世主"としての役割を失ってしまった現代のジョン・コナー、という予想してなかったリアルな設定を加えた3作目までもなかったことにされるのは腹立たしいとさえ思った!笑

ただ、今回の『〜ニューフェイト』で描かれる"もしも"は、サラ・コナーに訪れる悲劇や、ヒロイン・ダニーの未来の姿と未来からやってきたグレースの存在理由など、なかなか納得感が高く、それなりに楽しめた。
『タリーと私の秘密の時間』で浮世離れしたシッター役が印象的だったマッケンジー・ディヴィスのアクションもよかった。
28年ぶりにカムバックしたリンダ・ハミルトンの円熟味すごかった。
アクションもド派手だし、今回の敵Rev-9も過去作にないバランスを持ったキャラで、スペック的にも「どう倒すんだこの不死身、最強じゃんか!」ってしっかりターミネーターらしいしつこさもあった。
ターミネーターにおける敵、ってやっぱしつこさ大事ですからね笑

そのため、悔しいかな、やっぱりターミネーターなだけあって、(シュワちゃん演じるT-800がもはやただの人になってるやん、など細かいツッコミどころ、引っ掛かりは沢山あるものの)本作は本作でそれなりに楽しんだ。
タイムトラベルによるパラレルワールド≒シリーズのユニバース化、って実は時系列を基本とする他の映画シリーズでもやってなかったことでは?と思うので、過去作を無かったことにせず、今後も様々な"もしも"を語っていってほしいなと思った。
ただ、正直T-800が死ぬ≒停止する場面はさすがに6本目ともなれば既視感しかなく、もはや笑えてすらきたので新しく作り直す場合はもっとフレッシュな描写を期待。笑
ジャン黒糖

ジャン黒糖