みんと

マリア・ブラウンの結婚のみんとのレビュー・感想・評価

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)
4.7
ファスビンダー監督“西ドイツ3部作”(ベロニカ・フォス、ローラ、マリア・ブラウン)のトリを飾るのはコレに決めてた。
遂に念願叶って、幸せ~

まずは素晴らしいオープニングに心を鷲掴み!
そして見事に照応させたラスト。
いや~もう、とんでもない映画を観た感覚。
ラストの先でこれほど考えを巡らせたのは久々、いや初めてかも知れない。

激しい空爆にさらされる大戦下のドイツで結婚し、翌日には夫を戦場に送り出し、苦難の中で社会的な成功を収めていく女性マリアの生きざまを描いた作品。

夫の生存を信じ続けながらも、米兵相手の水商売をしたり、実業家の愛人となりどんどんと成り上がっていく。それでも彼女は、夫を愛し続けるのだが……。

かなりしたたかで、力強い、そしてクセのある『ひまわり』と言ったら良いのかなぁ…

重層的で緻密、監督の悪意すら透けて見える。ファスビンダー監督、やっぱり只者じゃない!
監督自身がゲイであること、そしてドイツに強い思い入れがあること、踏まえて観たとき、物語は幾重にも重なって見える。途方もなく奥行を感じる。そして、あまりにも解釈の幅が広がる。

それにしても、アンナを演じたハンナ・シグラの妖艶さ!ファム・ファタールぶり!
『哀れなるもの』での健在ぶりを今更思い出した。

演劇的な人物の動きやスムーズなカメラワーク、漂うデカダンスの匂い、そして
ワールドカップの実況放送を強烈に被せるラスト展開は鳥肌ゾワゾワ~ッ!
もはやセンスでしかない!

とんでもない西ドイツ3部作!
いずれも、ひとりのヒロインに戦後ドイツを重ね合わせた監督渾身の3部作。
中でも圧倒的で素晴らしい作品だった。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の破滅型映画作家ぶりを見せつけられた気がした。


観た人それぞれの解釈があり、考察しがいのある作品。取り敢えずもう1回観て、更にアレコレ考えよう…
みんと

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