黄金綺羅タイガー

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。の黄金綺羅タイガーのネタバレレビュー・内容・結末

2.8

このレビューはネタバレを含みます

幽霊を罵詈雑言で倒すという新しいスタイルを開拓したスティーブン・キングのホラー。
いや、ホラーというよりはこれはパニック映画だ。
CGで作られた気色悪いクリーチャーが随所で襲ってくる。
前回のクリーチャーが子供のときに怖いと思っているものの象徴だったのに対して、今回は生理的に気持ち悪いと感じさせるものが多かった。
これは登場人物たちが大人になり、恐怖の質が変化したためなのだろうか。

しかし変わっていないものもある。
それは彼ら自身が抱えている問題である。
そしてそれは27年前に自分自身に蓋をした問題、いわばトラウマである。
それに打ち勝つことが今回の映画の大きな目的であろう。
トラウマとは無意識下で溜まる膿のようなもので、それを取り除くためには自分の意識を切り開き、その原因となる過去を直視しなくてはならない。
そしてその膿を自分自身で取り去らなくてはならない。
このトラウマを克服する過程は“IT”に勝つための儀式と同じであるように感じる。

この儀式のために各人が思い出の品を集める過程が描かれていくが、ここでそれぞれが乗り越えるものが示唆される。

そういえばキングはよく物語の主人公を作家や脚本家にするが、この物語でもビルは作家になっている。
これはキング自身の投影であろう。
そういう意味ではビルがトラウマを乗り越えることは、キングがトラウマを乗り越えることなのかもしれない。
そのキングご本人が映画で登場して、ビルと会話するシーンはメタ的で面白い。

今回は前回は語られなかったキャラクターたちのエピソードも追加し、さらにこのchapter2だけしか観ていない人にもわかるように回想も交えて丁寧に描いている。
しかしそれでも前回を観ていないと説明不足に感じるところもところどころある。
また描く人数が多いために上映時間が長くなっている。
ここがこの映画の残念なところである。

ついでに残念なところをもうひとつ挙げるとすると、リッチーのファンだっただけなのに唐突に罵られ、祭りに行く途中だっただけのに知らない大人に唐突に街から出て行けと脅され、ミラーハウスで遊んでいただけなのにバケモノに唐突に喰われる子どもがただただ可哀想。

いろいろ難点はあるようには感じるが、前作を観ているならば、彼らがどうトラウマを乗り越えて、どんな人生を選ぶかを見届けるためにも観るべき映画なのかもしれない。