ノラネコの呑んで観るシネマ

飢えたライオンのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

飢えたライオン(2017年製作の映画)
4.5
これは力作。
SNS上のデマを切っ掛けに、松林うらら演じる平凡な女子高生・杉本瞳の人生が、徹底的に消費し尽くされる物語。
かなり自虐的なラストに至るまで、相当に心が痛く、なおかつ心底ムカつく映画である。
高校の担任が児童ポルノで逮捕され、彼の所持していた動画に写っていた女が瞳に“似ていた”ことから始まる、ネット上の無限拡散と現実社会のイジメ。
学校でも家庭でも、皆心配の声はかけるものの、誰一人として事態に対処する術を教えてはくれない。
定点の引き画Fixを多用し、多くのカットで瞳は背を向けていて、その表情をうかがい知ることは出来ない。
短いスパンでカットされるシーンの連続は、まるで着実に絶望へと向かう彼女の生活を隠しカメラで覗き見る様。
だが、この映画が本当に恐ろしいのは、瞳が退場した後。
拡散し続ける情報によって、一度でも飢えた大衆の餌となった人間は永遠にしゃぶり尽くされる。
リアリティたっぷりに描写される“現代社会”にムカついていると、「お前も消費している一人だろ」という動かし難い現実に気付かされる虚無感。参った。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1178.html