さうすぽー

リズと青い鳥のさうすぽーのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
3.4
自己満足点 66点

「物語は、ハッピーエンドがいいよ」
by 傘木希美

「聲の形」の山田尚子監督による、吹奏楽部を舞台にしたTVアニメ「響けユーファニアム」のスピンオフ作品になります。

「響けユーファニアム」自体は好きなアニメです。
自分も吹奏楽をやっていたこともあって共感したり、吹奏楽特有の人間模様が好きです。

そしてこの映画ですが、
主人公が違うスピンオフ作品ではあるのですが、作風や雰囲気が本編とは違って比較的静かなトーンでした。
スピンオフを観ているというよりは、一つのアート系のアニメーションを観ているようでした。
なので「リズと青い鳥」単体の作品として楽しむ事が出来ました。

この映画の主人公についてですが、
ユーファニアムの黄前久美子ではなく、オーボエの鎧塚みぞれが主人公です。
本編での鎧塚みぞれは僕自身そんなに思い入れが強いキャラクターというわけでは無かったのですが、この映画でみぞれの心情を静かに表せていたと思います。

彼女自身、凄く大人しくてコミュ障なのですが、本編の少し萌え要素のあるキャラクターデザインがあまり彼女の個性と合ってない気がしたのですが、この映画のみぞれは大人しくて暗い彼女自身を体現していて凄く良かったです。

そして、二人の関係性は本編でも描かれていましたが、今回はこの二人に焦点を当てていたので、二人の親友として、そして吹奏楽のメンバーとしての距離感を深く繊細に掘り下げていていました。

みぞれが無口だということもあって、二人の間でそんなに会話が多いわけでは無いのですが、表情や距離感等で二人の絆を描いていたのが独特で良かったです。

オリジナル曲である「リズと青い鳥」の曲も凄く良かったです。
物語性があって、本当にある吹奏楽曲なのでは?と考えてしまいました!

また時折「リズと青い鳥」の物語が挟んでくるのですが、これについては複雑です。

「リズと青い鳥」の物語内の作画は絵本の世界のようで良かったのですが、「本の主人公リズ」と「青い鳥が化けた少女」を演じた本田望結の声にだいぶ映画から気持ちが離れてしまいました。
声の演技自体があまり声優向きの声では無いのもありますし、わざわざ二役やる必要性は無かったと思います。
特にリズの方は映像と声が分離しているように聞こえてミスマッチに感じますし、聞けば聞くほど嫌いになっていきます。

また、全体像にスローペースではあったのですが、序盤は展開が動き出すのに時間がかかったので少しダレてしまいました。
この序盤の部分に二人の回想シーン等をもう少し多めに入れても良かったんじゃないかと感じました。

また、この映画自体は完成度は高いとは思いますが僕自身みぞれ自体そんなに興味があったわけではなかったので、そんなに心には残らなかったです。

ですが、全体的に映像が独特で、「響けユーファニアム」を知らない人でもある程度楽しめたり共感出来る所があったので、観てない方には一応おすすめ出来る一作でした。

(余談)
今年は邦画実写が頑張ってますが、アニメ映画も良い作品が多い気がします。
「さよ朝」に「若おかみは小学生」、そしてこの「リズと青い鳥」。
アニメ作品賞の方も楽しみです。