しの

仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディングPartIII 仮面ライダーゲンムVSレーザーのしののネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

ほぼ連続ドラマなので三部作まとめた感想を書きます。

私は三部作をイッキ見イベントで鑑賞したのだが、まず大前提として、楽しかった。もともと好きな作品だというのはもちろん、やっぱりコアなファンが多くて劇場の一体感はすごかったし、エグゼイド好きのみんなで見届けられたという体験はプライスレスだった。あの拍手の音は一生覚えていたい。

そして、確かにファンムービーとしては面白かった。笑えるネタはたくさんあった。燃える展開もたくさんあった。

ただ、ただですね。やはり本編の延長として深く考えると色々惜しいと思う。これはテレビシリーズに思い入れがあるからこそ、愛があるからこその率直な感想だ。

まず『ブレイブ&スナイプ』は丸々要らない気がした。「恋愛ゲーム」という軸だけでヒイロとサキの話に加え、タイガとニコの話も絡めようとするのは少々無理がある。サキは完全消滅したのか不明だけど、完全消滅したなら一旦復元されたのは何だったのかということになるし、完全消滅してないならヒイロとサキの話に進展がない。一方、タイガとニコの話は、ニコが結局アメリカに渡ってしまうというのが納得いかなかった。「今の私は私じゃないのかな」という問題提起にタイガが答えていないため、この話何だったのという感じが否めない。サキとヒイロの馴れ初め話は素晴らしかったけど、結局はマスターガシャット複製の為だけの話に思えた。

あと、これはテレビ本編終盤あたりからそうだったけど、全体的に後付け感や都合のいい展開が目立った。クロトの脱獄から始まり、ラブリカの復活、ニコが開発させた便利アイテム、正宗の形見……などなど。というか正宗、「大切な妻の命を弄ぶことは許さん」とか、「息子を止めてくれ」とかどの口が言ってるんだ。

そしてトリロジーで一番気になったのは、『ゲンムvsレーザー』での「バグスター化した人間は人間に戻れる」というオチ。これはちょっと「投げ」じゃないかと思ってしまった。本編最終話で「消滅やバグスター化はゲーム病の症状」という結論を出し、ゲーム病を難病のメタファーとすることでヒーローたる医師に未来を託す、というエンディングにしたのに、ゲームマスターのクロトがほぼ解決させてしまうのはどうなのか。もちろん、そこにはリプログラミングの技術が用いられていたり、ゲノム研究所やゲンムコーポレーションの協力があったりと、決してクロト単独の力ではないが、それでも結局「クロトが始めてクロトが終わらせた」感は否めない。こうなると、本編最終話やトゥルーエンディングでの、難病との終わりなき戦いを予期させる後味からはズレてくる。

更に、あのオチを許してしまうと、あれだけ倫理がどうたらの話をしておいて、結局今までの事件は何の問題もなかったということになってしまい、その意味でも肩透かし感がある。もちろん、人間に戻るというのはゲーム病が治ったということなので、一応のハッピーエンドなのだが、そこに至るまでに「命とは」「生きているとは」の議論や、再び人間に戻すことの倫理的な議論が出てこないため、どうしても軽さを感じてしまう。倫理というワードは一応出てきたが、それも「この時代の倫理が許さなかった」という安易な結論で、「だから人間に戻れるようにする」というのも安易な流れに感じる。

人間に戻す方法(=ゲーム病の治療法)が見つかるという話にするなら、そこに至るまでの医師メンバーとクロトのドラマをもっと丹念に描いて欲しかった。例えば、レーザーの言う「お前の嘘」をしっかりとしたエピソードとして描くとか。そうすれば、「クロト=消すしかない天才=災厄」という位置付けも納得いくものになったかもしれない。それなのに、せっかく復活させた正宗はあまり話の本質的な部分に絡まないし、彼の言う「心の中で生きている」のセリフや、ポッピーの宿主がクロトの母親だという設定もあまり活用されないため、ちょっと簡単すぎる気がしてしまう。

やっぱり自分は「これからも未知の難病と戦っていく」エンドが好きだったし、それがとても誠実な着地だと考えていたので、トリロジーの内容は一言で言えば「安易」だと感じた。

しかし、これは制作者も相当悩んだところだと思うのだ。テレビシリーズには、元凶であるキャラクターに具体的制裁や物語的結末が与えられないという重大な欠陥があり、その意味でこのトリロジーの制作は作品として必須であった。しかし一方で、作品の根幹であるゲーム病や医師の物語については、テレビシリーズの最終回や、劇場版のラストで理想的決着がついているともいえる。このため、クロトの話に決着をつけたいが、そうすると必然的にゲーム病どうこうの話を再燃させる必要があり、そこに加えて本編でも不十分だった倫理やら何やらの話にも結論を出そうとすると、合計3時間もない尺では当然無理が生じてくる。そういう制作の裏側を慮ってしまうと、まぁよくやった方なのではという気もしてくる。

とにもかくにも、これだけ色々言いたくなってしまう程度には、『仮面ライダーエグゼイド』が素晴らしい作品だったことは疑いようもない。ここに感謝の意を示したい。

ありがとう。
しの

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