スガシュウヘイ

鍵のスガシュウヘイのネタバレレビュー・内容・結末

(1959年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

中村鴈治郎、恐い。あのネットリした視線。歪な哲学。自分の妻を不倫させ、その嫉妬によって自らの活力を復活させる。しかも、不倫相手は娘の婚約者。なんだか、ギリシャ神話みたいだ。

しかし、そんなことが可能だろうか。自らが仕組んだ不倫で、嫉妬なんてできるのだろうか。私もそこまで人生経験がないので、わからない。わからないが、中村鴈治郎の凄みのある顔面は、「あー、この人なら何でもありだな」、と言わしめる力がある。


仲代達矢、若い。伊勢谷友介みたいだ。いや違うか。出世のためなら何でもやる。しかも、そんなに力んですらいない。淡々と、軽々と、こなしていくエリート。婚約者がいながら、その母親とも関係をもつ。特に良心の呵責もなく。不気味だ。


京マチ子、恐い。恐かった。妖艶、官能的などの形容がふさわしいのだろうが、私には恐かった。すべて見透かしているかのような視線。風呂場で倒れ、あられもない姿をさらけ出す京マチ子。なんか恐い。


全員恐いのだが、最後には、手伝いのばあさんに、みんな毒殺されてしまう、というトンデモない落ち。しかも、ばあさん、自首したのに取り合ってもらえない。京マチ子が書いた日記が、遺書だと受け取られてしまったのだ。

こうして、この家族が抱えていた暗黒は、永遠に葬られたのでありました。
めでたしめでたし。

なかなか見応えのある作品でした。

製作:1959年
監督:市川崑
原作:谷崎潤一郎
出演:中村鴈治郎、京マチ子、仲代達矢
受賞:カンヌ国際映画祭審査員賞