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ハングマンズ・ノットのblacknessfallのレビュー・感想・評価

ハングマンズ・ノット(2017年製作の映画)
3.6
ハイパー無軌道鬼畜未成年不良軍団VSハイパー自分本意キモオタ大学生柴田。

不良軍団がキモオタ柴田をカツアゲしたことをきっかけに両者が血みどろの殺し合いを展開し街をも捲き込んだ殺戮劇に発展していく。

これはアイディアとキャラがとてもよかった。特にキモオタ柴田が。
カツアゲされるぐらいだから一見弱々しいんだけど感情のスイッチが入ると戦闘力の高い殺戮マシーンに変貌する。
不良を殺す前にストーキングした女性宅に忍び込み彼女の誕生パーティーの準備をして待機するキモオタ柴田。
彼氏と一緒に帰宅した女性は当然ビビる。キモオタ柴田に出ていけと詰め寄る彼氏。
キモオタ柴田は、僕達付き合ってたのに何でだよぉぉ、と逆ギレしてカップルを惨殺する((゚□゚;))
この女性は本当に一方的にストーキングされててキモオタ柴田とは一面識もない。要するにコイツは完全にイッちゃってるキモオタ。被害者意識とプライドが傷つけられたと感じると殺戮マシーン化するというバケモノ笑
このキャラ設定のアイディアはとてもおもしろいと思う笑

対する不良軍団の方もなかなか。JKを拉致してシャブ漬けにして輪姦。たまり場にしてる仲間の家の親を文句を言われたからタコ殴りして生き埋め。
かなり酷いけど類型的ではある、てか、ちと凡庸にも感じた。
でも、演じた人達がリアルに頭が足りないヤバい雰囲気で迫力はあった。セリフ回しにバカ特有な怖さもあり悪くない。
こういうのは画き方で印象変わると思った。コイツらのやってることは「時計じかけのオレンジ」のアレックス達とほぼ同じなんだけどアレックス達みたいなかっこよさやカリスマは皆無なんだよね。酷いけど魅せられる要素がなくただただ胸糞になる笑

そんな感情移入不可能な鬼畜な両者の殺し合いなんで気軽に見れた笑

その殺し合いの描写はかなり気合いが入っていた。
これでもかとばかり血しぶきが飛び散る。派手なスプラッターと陰惨な暴力の配合具合が松村克弥監督の未成年凄惨バイオレスの傑作「オールナイトロング」を思わせる。
暴力とゴアで観てる側を圧倒してやろうという気迫が感じられた。

全般的に好みのストーリーで好きな描写も多かったんだけど、じゃあ、ノックアウトされたかと言うとそうでもなかった。

クライマックスの戦いで東日本大震災の支援ボランティアやってる学生達が巻き込まれ殺されるんだけど、前段で彼等の偽善性をチラッと見せてから彼等を殺すことで社会の欺瞞への挑戦めいたものを感じたけど、画き方があまりに安易で白けた。
不良達も親や一般人に対するイラだちを表明したりするけど、それも何かどこかで拾ってきたような安さで拍子抜けする。
この辺のリアリティーラインと言うか世界観の浅さが気になった。

そもそも浅く空っぽの人達の映画なんだから当たり前と言うかも知れないけど、そういうことじゃなく、その浅さや虚無の切り取りに説得力のある考察が皆無ってのは努力の放棄だから問題なんだよ。
キモオタも不良のことも表層的な情報をなぞってるだけなのに本人だけが深みのある持説を開陳してると勘違いしてるたぐいの痛々しさがある。
表層をデフォルメしてマンガ的なおもしろさは確かにあるんだけど、それなら変にシリアスなパート入れない方がよかったと思う。

この自分に取って好きなとこと嫌いなとこの質感とバランス、「ファミリーウォーズ」に似てると思ったら監督が同じ人だった、なら仕方ないか😂
一貫したカラーがある。作家性はあるってことだね笑

不良の他者に対する共感能力がまったくないことを示す「火垂るの墓」を見て飢えに苦しむ妹をゲラゲラ嗤うシーンは非常によかったし、間違ったプライドと被害者意識しか持たない戦闘力の高いキモオタ柴田のアイディアは本当に秀逸なので期待はできる監督だと思った。
キモオタ柴田はシリーズ化して色んな奴らと戦わせてほしい笑
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