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ザ・ビートルズ: 50年後のサージェント・ペパーズのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

4.0
「世界初のコンセプト・アルバム」と呼ばれるロック史を代表する金字塔「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の発売50周年を記念して、2017年に製作されたドキュメンタリー作品。原題は「It Was Fifty Years Ago Today! The Beatles: Sgt. Pepper & Beyond」で、アルバムの冒頭曲である「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の歌い出しの歌詞から取られている。アルバム発売50周年を記念してとあるが、内容はアルバム製作にまつわる話ではなく、その前後におけるザ・ビートルズの動向が中心だ。

この記念すべきアルバムが製作された前後はザ・ビートルズにとってはたいへんな激動期で、コンサート活動の終了、マネージャーであるブライアン・エプスタインの死去など、後の解散にも繋がるさまざまなイシューが起こっていた。このドキュメンタリーは、その岐路に立つメンバーの内面を深くえぐった作品ともなっている。とくに、メンバーのインドへの傾倒、瞑想家とされていたマハリシ・ヨギとの関係など、その功罪を分け隔てなく描写していく。ザ・ビートルズを広告塔として利用しようとしていたマハリシには、忌憚のない視線を送っている。

監督としてクレジットされているアラン・G・パーカーは、「ミッドナイト・エクスプレス」の監督とは別人だが、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のアルバム発売50周年という名目を借りて、ザ・ビートルズの最も興味深い部分に足を踏み入れているのは、見事としか言えない。いちばんの傑作アルバムがつくられた時期でもあるのに、バンドの内幕はさまざまな変化に見舞われていた、それを具に追いかけた作品であることはまぎれもない。ザ・ビートルズを扱ったドキュメンタリー作品のなかでも異色であり、その深部に肉薄した作品でもある。
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