Inagaquilala

マスカレード・ホテルのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)
3.8
いわゆるグランドホテル形式を借りたミステリードラマだが、実にテンポよくまとまっている。冒頭から、ホテルの従業員と警察の捜査員の動きを重ねて交互に描きながら、展開に緊迫感を与えている。多数登場するホテルゲストの描き方も当を得たもので、過不足がない。このあたりは監督である鈴木雅之が、テレビ局の社員として、「HERO」シリーズのドラマや映画で培ってきた円熟の技なのかもしれない。東野圭吾の原作小説は、彼の作品のなかでも上位にランクされるミステリーだ。映画は、基本的には忠実に原作の物語をトレースしているが、ひとつだけ、映画オリジナルの場面がある。およそ映像では表現が不可能な要素を、他の小道具を駆使して表現していた。それをとっても、演出はなかなか考えられている。

ホテルマンに扮する刑事役の木村拓哉も、役柄上いつもの「キムタク」が封印されているため、これまでにない新鮮な演技を披露している。相手役の長澤まさみに至っては、これしかないというほど、役柄としてフィットしており、このコンビが駆動力となって、この多くの登場人物が出入りするドラマを支えている。原作を読んでいたせいか、事件のトリックについては、あまり疑問を感じることはなかったが、もう少し丁寧に説明する必要があったのではないかとも思った。テレビ局が本気を出してつくった作品という感じは、セットやキャスティングにも表れていた。いずれにしろ、2時間超を飽きさせない作品であることは確かだ。
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