とてもで情熱的で、誠実で、エレガントな映画であった。
きらびやかなファッションの世界の物語というより、一人の芸術家の物語だ。
数ヶ月後も別の着方が出来る服
半年で飽きない服
持ち主と一緒に成長していける服
普段着でリラックスして着られる服
ドリス・ヴァン・ノッテンが追求する服は、私も求める服だ。
ファストファッションが広く流通するようになってから、その手軽さと気安さに、その時その時の気分に任せて服を買い求め飽きたら捨てることが当たり前になっていた。
ある時、ふと、そんな繰り返しを虚しく感じるようになった。
これでは何も残らない。一生懸命稼いだ金でごみを買っているのと同じじゃないか。
物を大切にしたい。
大切にしたいと思う物に囲まれて生活したい。
何年か前から、ファストファッションの類いにはほとんど手を出さなくなった。
かわりに、多少高くても気に入ったものしか求めなくなった。鞄も靴もそうだ。クリームを買ってきて磨いたり、丹念に手入れをする。
それが楽しい。
手軽に流行を追えるファストファッションにもその良さはあり、否定することはないのだけれど、作り手が心を込めて生み出した物を消費する側の私も心を込めて大切に扱いたい。
あらためてそう思わせてくれる素敵な映画だった。
とてもとても綺麗な気持ちになって、春の花を買って帰った夜だった。