リオン66

レイニーデイ・イン・ニューヨークのリオン66のレビュー・感想・評価

3.5
 古典的な演出であるが、映画において雨が降る場合というのは何かが起こる前触れだ。雨が降れば、ドラマチックな展開が起きたり、敵が攻めてきたり、あるいは別れがある。

 この映画も正にその古典的な演出を最大限に活かした作品に仕上がっている。雨に映える街や人々はとてつもなくロマンティックだ。いかなる言葉や愚かな肩書に装飾されようとも雨の輝きは失われない。雨を見る映画になっている。

 では、ストーリーはどうかと言われれば率直にいって物足りない。ステレオタイプの価値観。田舎と都会の比較。悩める人々。インテリの痛烈な批判。溢れるペダントリーとウディアレンのお箱の数々が散りばめられているのに何故か響かない。

 それは主人公の苦悩が足らないことにある。あまりにもイケメン。あまりにも裕福。あまりにも有能。あまりにもいろんなものを手にしている。そんな青年が何か悩んだところで共有できない。絵空事にしか思えない。
そして、厭世的な部分もあまり観られないのでカタルシスも少ない。

 また、断片的なストーリーが繋がらない。ウディアレンはこれまで断片的なストーリーを紡いでいく映画を撮っているがこれまでで一番個人的に上手くいっていないように思えた。いわば、相互になっていないのだ。自分の理解力のなさもあるのかもしれないが、それでも見にくかった。

 映画としてすすめるかといえばノーだ。ウディアレンの映画としてすすめるかといえば、こちらもノーだ。けれど、非日常を見たい人には最高の一本になるに違いない。

 この映画のセリフにもあるように、現実は夢を諦めた人のものなのだから。
リオン66

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