ミサホ

ワン・オブ・アスのミサホのレビュー・感想・評価

ワン・オブ・アス(2017年製作の映画)
4.0
大変興味深く鑑賞した。

ニューヨークの、ある宗教コミュニティからの離脱を望む3人にスポットを当てたドキュメンタリー。

「ハシディズム派」といわれるユダヤ教の宗派には、実に多くの戒律が存在する。世俗社会から切り離された、浮世離れした共同体である。

属している者には共同体という後ろ盾があり、助け合いや家族同然の付き合いが保証され、「孤独とは無縁」だという。しかしそれは共同体を離れようとする人を縛り付ける要素でもあるのだ。

実際、離脱した人の殆どが共同体に再び戻るという。信徒は世代間で受け継がれて来ており、子どもの頃から世俗との関わりを持たなかったせいで、世俗社会に出ても生きていくのは難しいのだそうだ。

共同体に属していさえすれば、孤独ではないと言いながら、その共同体自体が世俗社会から孤立している様は皮肉だよなぁと思う。

インターネットも禁止されていて、膨大な情報が溢れる現代、ましてやニューヨーク🗽にいながら、それを遮断し、居住区の中で独自の生活している。

男性信徒の正装は、もみあげ…というより左右こめかみ辺りから、首まで三つ編みのようにクルクルっと細くまとめた髪を下げていて、それ以外は短く、人によっては五分刈りだ。そこに大きなハットを被り、白シャツに黒いダブルのジャケットにパンツ。

髪型は置いといて、このスタイルは見ようによってはスタイリッシュだよね。(似たようなスタイルのアーミッシュはキリスト教)

宗教に救われる人がいる一方で、それによって自分らしさを失う人もいる。この共同体は“超正統派”とのことだが、もはやカルトだ。

元信者を支援する“フットステップス”という団体も存在するが、その支援団体に接触すると監視が付き、尾行される。やり方はまるでシュタージや北朝鮮のようだ。

ひとりのラビが言っていることは寛大で至極真っ当なのだけど、集団になると圧力がすごい。それは宗教に限らず、あらゆる社会の構図を映しているみたい。

人間ってただひたすら孤独に弱い生き物なのだなぁと思った次第。この作品で、遠くの知らない世界を垣間見ることが出来て勉強になった。
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