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ゲティ家の身代金のpikaのレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
3.5
「これだ!」っつー感想がとくにない。言い出したら色々出ては来るけど「これを言いたい!」ってのが賛も否も特にない。。話はウィキペディアの情報で事足りるし、アレンジした点の目新しさもなく、演出や演技も堅実だがここでしか見れないというような突出したレベルとは言い難い。
無難に面白いってだけでもクオリティは高いわけで制作陣全員凄いと思う。普通に楽しめるし不粋にほじくり返さなければ文句もない。
ただ、そういう無難な作品こそぶちぶち言いたくなっちまう。言わなくてもいいのにさ。

1000部の新聞が舞うシーンを途中でスローにしたり意味不明なところでモノクロにしたり全体的を寒々しくくすんだ色合いに統一させていたり、映像に力を入れているがそれがイマイチ魅力へ到達していない印象。演技はめちゃくちゃ良かった。ただその演技は単に撮ってるだけにしか見えず、役者がいいだけでそこから広がっていない。
マーク・ウォールバーグの美味しい役のようでいてほとんど設定に負けちゃってる存在感。それはそれとしても追加撮影でミシェル・ウィリアムズの1000倍だったかのギャラを要求したってのが何なのよと思った。演技もいつも通りで元CIA工作員感ほとんどなし。完全に周りに食われてるのに劇中以上の交渉術を外の世界でわざわざやるとは。
最初からクリストファー・プラマーでいいじゃんってくらいめちゃくちゃ良かった。特殊メイクとかCGとか余計だな。技術があるからへたなことしちゃう。プラマー以外あり得ないくらいハマってた存在感だった。
どっかで特殊メイクやCG技術の向上のせいで役者本人を若返らせたり年取らせたりするのは映画的につまらなくさせている、みたいなのを読んでなるほどと思った。「ゲティ家〜」もプラマーを若返らせて映すシーンがあったけどなくてもいいし誰でもいいようなシーンだったし。

実話を元に脚色している話で、脚色した部分は全体のディテールやラストの劇的なエンディングなのかなと勘ぐると「みんな金が欲しい」という概念を基盤に「欲を追う者(ゲティ:クリストファー・プラマー)と、無欲な者(アビゲイル:ミシェル・ウィリアムズ)の対比」というのを主題としているのか、寓話性と娯楽性を脚色したフィクションでやるのは面白いし、交渉と駆け引きのスリルが主題の見せ方とイマイチ呼応しているように感じられないが、その統一性のなさが逆に固有の魅力にも見えるってのはある。
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