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ブラザーのblacknessfallのレビュー・感想・評価

ブラザー(2017年製作の映画)
3.4
ケイジ、セガールに並び無視は許されないマ・ドンソク映画。

マ・ドンソク演じるソクボンは塾講師しながらトレジャーハンティングを生き甲斐にする夢追い人。お宝ゲットを目指して金もないのに高額な探知機を買い漁るハイレベルなドリーマー。
そんな講師とトレジャーハンティングの日々を送るなか実家から父の訃報が届く。
仲の悪い弟ジュボンと車でド田舎の実家を向かう途中、ある女性に車をぶつけてしまう。
幸い彼女は軽症だが同乗することになった彼女の不可解な行動、言動に兄弟は振り回されていく。彼女は兄弟の身の上や生活を知ってるフシがある。
そんな不思議な女性と兄弟は実家に到着する。

家の都合で仲が悪い兄弟が再会し謎の女性との交流で亀裂の入った兄弟の絆が復活する定番中の定番のハートフルコメディ。そこに女性の正体は?というミステリー要素を加えてある。

あまり失敗のないウェルメイドな映画だと思ったけど見終わってもあんまりハートフルにならなんだよな笑

この兄弟の実家はド田舎の名家なんだけど、そこの男尊女卑と閉鎖性が凄まじい。兄弟の叔父や従兄弟の嫁さん達が葬式の準備で甲斐甲斐しく働いてるのに男どもは何もしないで駄弁ってる。そして料理の出来が悪いからと怒鳴ったりする。
弟の会社の上司の女性が挨拶にくるとあからさまに家系の話を聞いてくる、とか本当に田舎の家父長制と権威主義のエグいシーンが多すぎる。
そもそも、この兄弟の仲が悪くなったのもこういう田舎の風潮のせいなんだよ。兄のドンソクは跡取りだからと父からスパルタ教育と過剰な干渉を受ける。弟はほぼ放ったらかし、弟から見ると兄が親の愛情を自分から奪ったようにしか見えない。

そんな田舎への怒りや兄弟同士の感情の澱が葬式で集まることで噴出する。そこで色々ドラマが展開して最終的に兄弟仲が復活するのはいいんだけど、問題になった田舎の旧弊な価値観への批判がすごい弱くて心から喜べなかった。
こういう話ならそこを周り人達が悔い改めるのが必須だと思うんだけど、それがまったくないんだよ!亡くなった父親も兄弟には結果的に酷いことをしたわけで、しかしその話すら実は裏があって父は完全な善人てことになってしまってるし、、

それと不器用でキュートなおっさんを演じさせたら当代一のマ・ドンソクを持ってしても兄のキャラがあんまキュートに見えない。トレジャーハンティングで金詰りのために実家の金目のものをこっそり金に換えようとする。これも『無双の鉄拳』の時みたいに奥さんを豊かな生活をしてもらいたいから、的な設定があれば好感もでてくるけど、自分の夢だけなんだよな、今回は。
しかし、マ・ドンソクは『無双の鉄拳』で、あやしい投資話に飛び付くし、『神と共に』では神様なのに株で金を溶かして守るはずのおじいさんとその孫を窮地に追い込むし、金儲けが下手な役多いよな笑 どれもハマってたけど。

コメディのメソッドをしっかり踏襲してるし、ギャグも冴えてるシーンもあって笑えるけど、メインの話と主要キャラの性格に難がありすぎて、そっちが気になってあまり楽しめなかった。

唯一無二手放しでよかったのは兄弟の従兄弟の嫁さん。
都会からきた弟の上司のキャリアウーマンに興奮して彼女のブランドもののバッグを持たせてもらって大喜びし、「ソウルにはおしゃれなカフェがいっぱいあるですよね?」とはしゃいで話す様子が素朴で性格がいい田舎の女性って感じでキュート、顔もかわいらしいし。
まあ、でも、そんなことでこんなハイになるってことはそれだけ田舎に抑圧されてるってことなんだけどね。やっぱり手放しでよかったは撤回する😑
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