しの

グリンチのしののレビュー・感想・評価

グリンチ(2018年製作の映画)
2.8
イルミネーションらしいアニメ的ハッタリの効いた動きは見ていて楽しい。クリスマスツリー、ソリ、キャンディケーンなど、クリスマスに因んだものを面白く見せるアイデアは満載。一方、物語としては86分すら長く感じる程度に工夫がなく、予想していた展開のそれも大筋しか描かれない。

全体を通して「語り」を用いた童話的な世界観で進行する。原作が絵本なのでこれはいいんだけど、本作の場合は物語があまりに単純なため、それを更に説明してしまうと話としていよいよ脆弱になる。その上、ドタバタ劇で物語を引き延ばしている感じもあり、広がれば面白そうな話も広がらない。

クリスマス嫌いなワケあり主人公と、クリスマスの魔法を信じる少女。この時点で、2人が化学反応を起こす流れが見える。ここをどう描くかがキモなのに、そもそも村人との交流があまりない。53年間も捻くれていた(これも台詞だけで実感湧かないが)のなら、もっと決定的に魔法を感じる瞬間があっていい。

少女の「願い」が活かされないのは驚いた。例えば、クリスマスを信じない主人公に、クリスマスを信じすぎる少女をぶつけることでドラマを発生させる…みたいな筋を予想していた。どちらもクリスマスの物資的・形式的側面しか見ていない点で同じだからだ。実際、着地だけはその筋になっているのでもどかしい。

主人公の抱える孤独とそこからくる妬みにも似た感情は、クリスマスに限らず誰かしら抱いたことがあるであろう普遍的な感情だ。一方、少女サイドの話も「願いの力」というやはり普遍的なテーマを内包する。このように、広がりを持たせれば非常に豊かな物語になったであろうに…という思いがアニメの楽しさに先行してしまう。単純な話にするならするで、もっとガツンと魔法を感じさせて欲しかった。
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