mrかっちゃん

スパイダーマン:スパイダーバースのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

4.7
「え?俺は誰かって?マイルズモラレス
そう、スパイダーマンさ」

アカデミー長編アニメーション作品賞やゴールデングローブ賞など数々の映画祭で、評価され、ソニーピクチャーズの確固たる自信と、アニメーションを愛するスタッフの熱い情熱が圧倒的な完成度とクリエイティブな映像表現から伝わってきた。
3DCGアニメ映画の新たな時代を切り開いた先駆者とも呼べる作品。

去年公開された「ヴェノム」と同じマルチスパイダーバースの2作目。
ピーターパーカーがスパイダーマンとして活躍している中キングピン/フィスクが失ってしまった家族を取り戻すため、次元を歪める装置を使って別の次元から家族を取り戻そうとする。
それを阻止しようとしたスパイダーマン/ピーターパーカーは返り討ちに遭い還らぬ人となってしまう。
ピーターの死の直前にスパイダーセンスを手に入れた2代目スパイダーマンことマイルズ。

彼の死を目撃し自分は彼のようになれるのだろうかと自問自答していると、フィスクが行った行為によって、パラレルワールドから多数のスパイダーマンがマイルズの世界に迷い込んでしまう。

別のスパイダーマン達との出会い、そしてマイルズがヒーローとしての自覚とこれから戦いに身を投じる運命を受け入れる誕生譚

ストーリーは非常にテンポがよくポップでエンタメに昇華しつつも、マイルズの心の揺れ動きをとても丁寧に時間をかけて表現し、エンターテイメントとしても映画としても完璧だったと言える。
キャラクターの魅力も素晴らしく、マイルズと別のピーターパーカーの王道な凸凹コンビ感は観ているだけで楽しい
他のスパイダーマン達もそれぞれファイトスタイルも違い、またキャラクターに分けてアニメーションの表現の仕方を変えている革新的なアプローチ。
それでいて、しっかり見せ場も用意されている。

キャラクターに分けてアニメーションの表現が違うと書きましたが、何よりこの作品が他の映画を突き放している部分はアニメーション。
所謂ピクサー的な3DCGの表現ではなく、3DCGでありながらもセル画に見えるようにセルシェーディングしコミックスの世界に迷い込んだかのようなトリップした驚異的で唯一無二の映像表現。
180人もののスタッフを旋回戦術し完成されたそうですが、毎1フレームから自分達の信じたものと伝えたい表現でいいものを作るんだという熱量が伝わってきた。

今のアニメ映画はディズニーやピクサーが圧倒的な力を見せつけていますが、それに果敢に立ち向かったある意味反逆のように捉えてしまい心から頑張って欲しいと切に願っています。
決してディズニーやピクサーが嫌いな訳ではありません。
最後に一つだけ言えるはこの作品はこれからのアニメ映画を代表し長年愛される作品であることには間違いはない。