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スパイダーマン:スパイダーバースのdojiのレビュー・感想・評価

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"ありえたかもしれない"スパイダーマンたちを、アメコミタッチをはじめ日本のアニメをも飲み込んだなんでもありの自由なビジュアルで描く全編は観たこともない画が満載、けっこう口開けて観ちゃってた気がする。

そしてものがたり自体もとても一貫していて、ありえたかもしれない世界に迷い込む登場人物たちは、後悔や諦めをこころに抱え、悲しみを背負うキャラクターとして描かれている。そして観客側からしてこちら側の現在であるマイルスは、ものがたりの中で人生そのものを選択していき、それが可能性の幽霊に囚われた登場人物たちにちからを与えていく。こんなにストーリー自体もマルチバースに真剣に向き合っているとは思わなかったから、なんだかとても感心してしまった。

それだけテーマに向き合ったストーリーにおける悪役として登場するキングピンも、失ってしまった妻と息子を、ありえたかもしれない世界から呼び戻そうとしている。運命を選択していくことで現在を進んでいこうとするマイルスとほんとうに対照的な存在として描かれていて、すごい悪役然としたビジュアルだけれどどこか憎めなかった。

それにしてもこの映画、吹替のみの映画館が多かったのだけれど、日本アニメに影響されてるであろう本作へのなんらかの意識があるのかな。ぼくとしては制作された国のことばで観るのが好きなので字幕版で観ました。けっこうジョークの部分も英語ならではだったので、もうすこし同じくらいの上映館数ならよいのになと思った。
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