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15時17分、パリ行きのkouのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.0
《シンプルでリアル》
なんとも不思議な映画だが、大きな感動を生む。クリント・イーストウッドは年齢を重ねるにつれて挑戦的な試みをしている。今作では2015年のタリス銃乱射事件を元にし、よりリアルに、現実に起こったことを完全に再現しようとしている。今作の大きな特徴であるように、登場人物を実際の人物が演じている。

映画は大きく三つに分かれる。武装した犯人へ立ち向かった三人の子供時代。そして彼らのヨーロッパ旅行。実際のテロ事件の様子とその後。序盤の少年時代は、正統派の少年ドラマといった感じ。彼らが厳しい学校で溶け込めず、三人のきずなを深めていく様子が描かれる。ヨーロッパ旅行の場面はとても不思議で、彼らが旅行した道のりを同じようにたどっていくのだ。

バラバラに見えた序盤と中盤は、クライマックスで集約する。多くの「もし」の先、彼らが選んでいった先にあの事件が起こったのだ。今作で主人公スペンサーは、「ある大きな目的に向かって人生が進んでいる気がする」という。その一言が今作ではとても重要になっている。多くの奇跡が起こって、テロ事件が防げた。それは何かに導かれるように。

映画の最後、スペンサーはある言葉を暗唱する。いくつもの奇跡を映画の終わりで振り返ったとき、それは大きな感動を生むのだ。シンプルでリアル、それでいながらラストは大きな感動を生むことになる。凄い斬新で新しい作品だと思った。イーストウッド監督の見事な傑作に仕上がっていた。
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