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15時17分、パリ行きのmaverickのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.2
英雄的行動から一躍時の人となった実在の人物を映画化するのは、最近のクリント・イーストウッド監督の主流になっている。ただ本作が彼の長い映画監督のキャリアの中でも特異なのは、主人公3人を実際に本人達が演じていることだ。彼らは全くの一般人の素人。演技経験はない。イーストウッド監督はこれまでも、作品にゆかりのある人物などの素人を出演させたりはしているが、映画業界においても素人が本人役で主演するというのは稀である。自分もその点から不安だった。名作揃いの彼の映画作品の中でも今回は失敗作になるんじゃないかと。でも全くの杞憂だった。監督が言っているが、これまで多くの映画を撮ってきたその自信があるから心配はいらなかったと。彼にはこれまでいくつもの作品を成功させてきた手腕がある。どうすれば良い映画が作れるか、何が良い演技なのかというのが明確に分かる人。ソフトには特典映像が入っているから本編鑑賞後に是非観てもらいたい。流石だなと感じた。本作は幼馴染み3人組の話であり、彼らが列車テロを防いだ事件までを描いてある。幼少期から丁寧に語ってあり、そこまで丁寧に描く必要があるのか、王道すぎやしないかと思いきや、これがきちんと事件の3人の行動に繋がっている。本人らも言うように、彼らはごく普通の人間である。小さい頃はどちらかというと問題児で、スポーツや勉強も秀でておらず、平凡すぎる子供だった。成長して大人になっても3人でつるみ、クラブで踊ったり酒を楽しんだり、自撮りが大好きな今時の若者だ。2人は軍に入ったが英雄とはほど遠い活動の毎日。でもそんな彼らが勇敢にもテロの犯人に立ち向かった経緯は、彼らの生い立ちや人となりを本作で見ればしっかり伝わる。平凡なように見えて、内にある正義や勇気は人一倍だった。人のためになる正しいことをしたいと思い続けたことで、神様が試練を与えてくれたとも本人は語っていた。イーストウッドが彼ら本人で撮りたいと思う気持ちがよく分かった。彼らを称える作品であると共に、我々もそこから多くを学ぶことが出来る。素晴らしい!
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