ただひたすら〈お涙頂戴〉で収まってない話の作りは良いな、と。
人間ドラマでありながら途中からジャンルを切り替えたかの様に演出が変わった辺りも効果的だったと鑑賞後に感じた。
原作は知らないが映画として着地点までのまとめ方も あの話運びでありながら整理整頓されていたと思う。
ただ、その着地点が綺麗なまとめ方のせいでテンションが少し落ち着いてしまったというホンネも無くはない。
それぐらいに中盤以降のホラー的な展開が強烈なのよね。とても攻めてるがゆえに「ど〜なるんだ、コレは!?」となっていた気持ちに対して普通に正論ぶつけて来た…とも見えてしまう。
ただ、コレは扱ってる内容が重くデリケートな事ゆえ、シンプルに「そういうのじゃねぇんだよなぁ…」とか言える事ではなく、1つの答えとして至極納得できるモノでもある。
なのでコレはコレで良いと思う。
そういう風に個々に色々と考える映画なんだろう、と。
正直言えば、ワシは堤幸彦は苦手だ。
ってか苦手が重なって嫌いなレベルだ。
特に超能力系TVドラマが発展して起承転結するヤーツとか ともだちのせいで人類さあ大変!なヤーツとか概ね噴飯モノだ。
(ファンの方々には申し訳ない)
ただ今回の演出はそんなに怒りが湧く事がなかった。
やはり個人的にはもう少しリアリティ寄りな演技の方が…と思ったが「アカン!」とまで言う気にはならない。
お節介クラスな説明ゼリフもソコまで過剰ではないし、ぶっちゃけノイジーな感覚が少なかったのである(まぁ"無い"とは言わないけどw)。
それだけでも相当良いじゃないか!と。
ただ改めて考えると、抑えながらもそれなりにエンタメ感のある演出の変化をやっているからこそ、収まりの良い着地が「泣いて下さい」と言ってる風に見えたのかもなぁ…
まぁ何よりも素直に入り込んで観れたのは
《篠原涼子パワー》
コレだ。
圧倒的な演技…ってか演技に思えないぐらい強烈で"お見事"としか言いようがない。
トップ集団の中でもトップを走れるだけの底力を見せられた感じだ。
もう早い段階で"喋らんでも画面に存在してるだけで説得力ある状態"になってたもんね。
概ねソコまで文句は無い。
素直に良い作品だと思っている。
しかし、コレだけは書かせて頂きたい。
言うても重箱の隅レベルの話かも知れないが、どうしても落ち着かない部分が1つだけあってね。
それは…
スコア(劇中曲)である。
いや、ダメってワケじゃないのよ!
このテの作品は"悲しい時にはピアノソロというワンパターン"…という人も居るかも知れないが、ソレだってワシは嫌いじゃない(よっぽどじゃなければ)。
ただしこの作品に関して言えば、
『 ちょっと積載オーバーだな。』
場面転換でずっとかかっていたBGMがカット割りタイミングに間に合わず、音の余韻を切る様にフェードアウトする部分が何度かありまして。
(↑ましてやコレがピアノソロとなると余韻の加工はあからさまに分かりやすい)
結果、ソレが「ハイ、次行ってみよ〜。」と切り替えの合図を出している。
コレはもう、
いかりや長介である。
「後半戦しゅっぱ〜つ!」
「ダメだ、こりゃ。」
例えが古くて申し訳ないが、結果的にやってる事が"いかりや長介"である。
スコアの作り込みが甘いのか、編集が甘いのか、O.K.とした監督がユルいのか、原因を特定する事は素人のワシには判断しかねるが、BGMの過積載で荷台をハミ出てるのは見てる側も落ち着かない。
せめてしっかりロープで固定してれば まだ良かったが、その固定すら下手なら積載物そのものを積み直す所から考えてもらいたい。
映画音楽好きなオッサン、こういうのはとても落ち着かないんですわ。
やっぱウマい監督ってスコアの使い方も丁寧ですよ。
本編が良かったから なおさら「…オイィ〜っ!」と江頭2:50のモノマネしたくなるぐらいに落ち着かなかったですわ。
…と、どうしても言いたかった事は書いたので落ち着きましたw
まぁ細かい部分なので気にならない人は大丈夫だろうし、とりあえずトータルで言えばかなり良く出来た作品だとは思う。
堤幸彦作品なのでしばらく手を出さなかったが、間違いなくこの監督作品では上位に来るし、脇の演者にも不満なく、やはり何より『篠原涼子スゲェな!』って事でトータル良い映画でしたよ。