ノラネコの呑んで観るシネマ

人魚の眠る家のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.2
不慮の事故で、幼い娘が脳死と宣告される。
しかし、心臓はまだ動いている娘の死を受け入れられない篠原涼子演じる母親は、テクノロジーの力を借りて娘を延命させようとする。
最初は呼吸、やがては四肢の筋肉。
手足も動くし、表情だって作れる。
しかし、彼女に意識が戻ることは二度とない。
前半は娘をまるで生きている様にとり繕う、母親の想いの切なさ。
後半は、自分の技術に溺れてプチ神さま気取りになる、坂口健太郎の医療技術者の暴走と共に、母の愛が常軌を逸してゆき、ややホラーテイストに。
泣ける映画として売っているし、実際ちょっとウルっと来る所もあるのだけど、物語を通して描かれるのは、いったい何をもって死なのか?命はどこにあるのか?ということ。
登場人物を通して死生観が問われる。
玉石混淆の東野映画の中では、上位に来る作品だと思う。
ホラーっぽい部分にらしさは見せるが、堤幸彦の演出も外連味を抑え堅実。
しかし子供は脳死から数ヶ月から数年も、心臓が止まらない場合があるというのは知らなかった。
そりゃ、親としては生きていると信じたくもなるわな。
私は子供がいないけど、想像しただけでも心情は理解できる。
篠原母さんは熱演だが、私はやっぱり西島父さん目線で観た。
やや冗長な部分もあるし、終盤の“感動”は少々押しつけがましいが、なかなかの良作。