マクガフィン

1987、ある闘いの真実のマクガフィンのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
4.0
独裁政権に抗う庶民のパワーが渦巻き相乗する群像劇は、重厚でスペクタクルな社会派ドラマに。韓国映画ならではの過剰な演技や演出も字幕なら気にならないことが良い。

韓国民主化の経緯を、検事・新聞記者・看守・学生・市井のおばちゃん・聖職者などと、幅広い人物で多角的に描き、リレーのような人と人との繋がりの流れにも。各々の正義感や良心を熱く描くことは情緒過多だが、コンパクトでテンポよく展開してエンタメ大作に纏めたことが秀逸。

市井的な看守の娘は、男ばかりで華やかさが足りないアクセントかと思いきや、同じ大学生の学生運動家リーダーとの対比に。娘のデモや民主化に対してペシミスチックな見方をする心境の変化がメタ的で、ラストのカタルシスに繋がる。

政権鎮圧側の年齢層高めな人たちをアホに描くことも効果的。自発的隷従者たちの善悪の判断を〈しない/できない〉無能さは、抑圧されるがままになっているどころか、敢えて自らを抑圧させているかのようにも。

ただ、熱量はすこぶる高いが、劇中の人たちが政権打倒に対する明確なメッセージを打ち出さなかったことは意外だった。その後の民主化がスムーズに進んだのかが気にる。
エンドロールに本人登場もあるが、史実の考慮は別と捉えた方が良いかな。

歴史を変えて民主化を勝ち取ったものが明確に浮き上がり、人間の尊敬がひしひしと感じる。〈隷従〉を続けるか、〈自由〉を求めるかは、個々の意志の問題が大きいのだろう。