イチロヲ

赤い天使のイチロヲのレビュー・感想・評価

赤い天使(1966年製作の映画)
4.0
戦地の陸軍病院に配属された従軍看護婦(若尾文子)が、軍医(芦田伸介)との疎通を通しながら、特殊極まりない環境に順応していく。日中戦争を背景にして、従軍看護婦の葛藤劇を描いている、ヒューマン・ドラマ。有馬頼義の同名小説を原作に取っている。

患者に癒やしを与える立場となる看護婦の視点から、従軍の不条理性を説いている作品。人間が有する最大の欲求、「性欲」をキーポイントにしており、情緒を捨て切れない看護婦のジタバタ劇が描かれる。

重症患者と戦死者が群がっている陸軍病院の様子を妥協することなく描写しているところがスゴイ。まさに阿鼻叫喚地獄絵図そのものであり、実際の戦場をカメラ撮影しているような錯覚がしてくる。

不眠不休でもメイクばっちりの若尾文子が、事務的な対応の風俗嬢状態になるため、ついつい笑いを誘われてしまうが、いつ死ぬか分からない状況下であることを慮ると、これも真理だと思わせられる。
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