アキラナウェイ

ヘル・フロント 地獄の最前線のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.2
ジャケットではわかりにくいけど、1番右端はポール・ベタニーです。MARVELシリーズで、赤い顔でおでこからビーム出す人です。

原作は舞台劇だと後で知って納得。
戦争モノにしては、派手な戦闘シーンはなく、淡々と進むドラマ。塹壕の中で、敵の姿が見えない中、張り詰めた緊張感から精神をすり減らすイギリス軍将校達の人間模様こそが本作の見せ場。

1918年春、ドイツ軍の攻勢が迫る西部戦線。守るイギリス軍部隊は各中隊を月に6日間ずつの交代で最前線の塹壕に配置させる。ドイツ軍の攻撃が近いと噂される中、自分達が任務に就く6日間に当たるかどうか。英軍兵の関心はそれに尽きる。

陸軍大将の甥であるラーリー少尉(エイサ・バターフィールド)は、自ら志願し、スタンホープ大尉(サム・クラフリン)が指揮する中隊への配属される。ラーリーの妹の恋人であるスタンホープは、長引く戦況のストレスから、人が変わった様で、アルコール依存に悩まされていた。

青い瞳が印象的なエイサくん。
「縞模様のパジャマの少年」や「僕と世界の方程式」等、良作で主演を張れるだけの存在感。

性根が腐った役を演らせたらピカイチのサム・フランクリン。ラーリーに対して、敢えて厳しく当たり、酒に溺れる難しい役所を、観客に絶妙な苛つきを覚えさせながら好演。僕史上、まだ好感が持てる役には就いていない。いつも何かムカつく役なんだよね。

ポール・ベタニーは、人格者であるオズボーン中尉役。将校2名と兵10名で敵陣地を奇襲する作戦で、ラーリーと行動を共にする。死と隣り合わせの極限状態にあって、誰からも信頼を寄せられる、最も好感が持てるキャラクターを演じている。

「1917 命をかけた伝令」「彼らは生きていた」と続けて観た事で、イギリス軍が洗面器みたいなヘルメットを被っている事も、塹壕の中での任務がいかに過酷であるかも知っていた。

いくつもの戦争映画を繋げて観る事で見えてくる戦争のリアリティ。

それは、個人的には大きな学びで、本作を観れたのも有意義ではあったけど。舞台劇の出自であれば致し方ないけど、いかんせん人間ドラマに重きを置き過ぎた事で、印象には残り難い。

でも、戦争映画は派手なら良いって訳でもないし、この類の作品に対する評価は難しい。

1918年3月18日からドイツ軍の砲撃が始まる3月21 日までの4日間を描いた本作。その後、ドイツ軍の攻撃は3ヶ月続き、両軍に70万人の犠牲者を出したという。

そんな歴史的事実を前にして、映画が「退屈だ」「面白くない」と一蹴するのもどうかと思うし。

人間ドラマだと割り切って、主要キャストのファンであれば、おススメです。