さうすぽー

万引き家族のさうすぽーのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.8
自己満足点 93点

2018年の個人的ベスト3位に選んだ作品です!

観た後に言葉にならない感動が起こりました。
確かにこの家族は欠陥だらけ、問題だらけです。
それでも僕はこの"家族"が大好きです!

万引きで生計を立てている家族がいて、父親と息子がある冬の寒い日に帰りの夜道を歩いていると、部屋に一人でいる5歳の女の子を見つけ、家に連れていく。
そこから物語は始まります。

物語自体はキャストが自然な演技をすることであたかも実際に起きてるかの如くリアルに見せるモキュメンタリー風な演出で見せています。
これは、是枝監督が「誰も知らない」という柳楽優弥主演の映画で見せた演出と同様です。

そしてもう一つ、子役の演技を上手く見せる演出も行われています。
これはどのような手法で行ってるかは解りませんが、先程の「誰も知らない」と僕の好きな「奇跡」という映画でも行っていて、恐らく是枝監督の最も得意且つ独特な演出技法だと言えるでしょう。

この方法で演出してくれた結果、本当に子役の演技には引き込まれました。
特に女の子を演じた佐々木みゆちゃんが映る時は何回も涙目になりました。
そして、演じた女の子のキャラクター像を観て考えさせられました。

少しばかりネタバレしてしまいますが、この女の子には虐待の跡がありました。

これについて、最近似たような事件があったと思います。
女の子を親に虐待された挙げ句に亡くなってしまうという事件。
その子も、映画の女の子と同じ5才でした。
観ている時に凄くこの事件を思い浮かびました。
映画に出てくる親も無責任で最低な両親で、その行動を見るや、「こういうやつがあの事件を起こしてしまうんだ」と悟りました。
作品がその報道の直後に公開された事を考えると、非常に複雑な気分です。
これについて監督はどう感じたのかも気になります。

確かに所詮彼らの家族は張りぼての疑似家族ですし、万引きはやってはいけない最低な事です。
しかし彼らの、見えない花火を観賞したり、海水浴を満喫してる姿は紛れもなく「理想の家族」そのものでした。

こうやって絶賛はしているものの、前半部分も家族の日常部分を映していていて良かったのですが、比較的地味なトーンなのでここまで引き込まれていませんでした。

しかし、決定的に引き込まれたのは後半部分の演出です。
ワンカメでリリー・フランキーや安藤サクラのドアップで映し出されます。
邦画では在り来たりな手法なのに、前半部分の魅力やキャストの演技の良さも相まって、気が付いたら釘付けになってる自分がいました。
単純な演出でありながら本当に素晴らしかったです。

上でも記載しましたが、キャストも非常に素晴らしいです。
主演は恐らくクレジットが一番上に来てるリリー・フランキーだと思うのですが、個人的には主人公はこの家族6人全員だと思います。

家族キャストである、安藤サクラ、リリー・フランキー、城桧吏くん、佐々木みゆちゃん、松岡茉優、そして樹木希林、
この全員の演技が素晴らしかったので、もし僕が何らかの映画賞の審査員ならこの6人全員に主演俳優賞を贈りたいです!

今年観た映画で、そして僕が今まで劇場で観た映画の中で、こんなにも映像に釘付けになった映画は他にありません!
そして、2018年に観た中で最も観た後の余韻が強かった作品でした!

カンヌ国際映画祭で最高賞を獲ったのも充分理解が出来ました!
改めて言いますが、
是枝監督、本当にパルムドール賞受賞おめでとうございます!


余談:
映画というのはあくまでも娯楽作品だと思っています。
ですので、あまり娯楽に長けてない社会派の作品ばかりが日本の映画賞を受賞したり雑誌のランキングに入れる事に前々から疑問を抱いていました。
それは、社会派のものが作品として全部が良いとは思わないし、演出面やカメラワークが良くない作品も多いからです。

しかし、今回の「万引き家族」のように演出やキャスト面でも良い要素があると納得出来ます。

何が言いたいかというと、
話の良さだけで無く、演技、カメラワーク、音響、演出も良い、こういった作品が評価されてほしいということです。

2018年 ベスト3位