Mako

万引き家族のMakoのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.1
映画を観ている最中には、そんなに泣きませんでしたが
上映が終わって、照明がついて、何となく余韻を感じながら静かに席を立って
一緒に行った相手に
「面白かったね」とか「凄かったね」とか言いたいけれど言葉がサッとは出て来ず
この感情を何と言おうかと、記憶を振り返った瞬間
ポロポロと涙が溢れてきました。


その時出した、気持ちに一番近い言葉は
「かわいそうだった」でした。

大人も、子供も、みんなかわいそうでした。


どうやったって幸せになれない事柄を背負った時、受け止められずにその現実から目を背けて
毎日「どうやったら幸せになれるだろう」だなんて模索しながら生きて
そして、小さくても幸せを見つけて、ちゃんと「幸せ」だと感じて、何となく幸せに過ごしていても
そんな時期を振り返ってみると、その生活は「つらかった」と思い出されるのではないでしょうか。
そんな気持ちになりました。


映像は、すごーく「生活感」が出ていてイイなと思いました。
自分が、まるでそこに居るかのような、ドキュメンタリーでも観ているような気持ちになりました。
あれ、あぁいう人たちが住んでいる家ではなく
作られた、映画のセットなんですよね。
一つ一つ、何を置くか考えた、用意した、セットなんですよね。

あとは、それを映す空気感。
インスタやyoutubeなどで、手軽に海外の一般人の家の中の写真や動画を見る事ができますが
「自分がそこに居るような生活感」「その周囲までも想像できるような空気感」を感じられる写真は、とても少ないと思います。

それが、海外の人から観ても「日本の独特の空気感」を感じられて、パルムドールに繋がったのではないかなと思いました。



⚠️以下ネタバレ⚠️


一番突き刺さったシーンは、
「子供ができなかったのはかわいそうだけど…」と、流すように言う警察。
そして「憎かった?」だか「うらやましかった?」だか訊かれたシーン。

その言い方に「はぁ?」とキレてしまいそうですが
彼女は、言い訳だの正当性だのを主張するよりも、自分が「つらかった」事に気がついてしまい
そして「つらかった心」に耐えられない彼女の感情が、とても心に突き刺さりました。


必死に、生きたいとする姿や、愛を求める姿が、とてもかわいそうでした。

「救いのない結末のシナリオ」でしたが
結末ではなく、短いひと時でも、「愛した」「愛された」「愛が伝わった」という事は、とても大切で、意味のあった事だったと思います。

ただ、もちろん何箇所か気になった部分もありました。
子供って、2〜3日他人の家に泊まっていたら、実母がどんなに虐待する人間でも「帰りたい」と言うのではないかな…と、少しリアリティに欠けた気がして、ふと一瞬現実に戻ってしまいました。

池脇千鶴は「まともな倫理観を持った大人」という役柄だったように思いますが、どうも池脇千鶴の持つ「病んでる感」のせいで、少し心にピタッと来ない感じがした。
虐待などをテーマにした映画「きみはいい子」で、印象的な役柄を演じた、高良健吾と池脇千鶴の2人だったので、何か意味や繋がりがあるのかも知れませんが、少し私のイメージとは違うかなと思いました。


あと、若干家族の関係性が理解できない部分がありました。

あの家は祖母の家で
姉は、祖母の元夫が再婚した女との息子の娘で
父は、母の元夫のDV男を殺しちゃっていて
男の子は、母が拾ってきた子で…

パンフレットには、相関図があるようなので、今度買ってみようかなと思います。
Mako

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