是枝監督の最新作。犯罪で繋がった疑似家族、これまでも様々な社会問題や事件を扱ってきた是枝監督。ただ今作にも共通するのは家族のかたちについての映画だということだ。初めに、今作がパルムドールを撮ったということが今年の映画関連のニュースでもとても喜ばしい、素晴らしいニュースだった。是枝監督作品をずっと追ってきた自分にとってここまで世界に評価されるという所がとてもうれしい。
今作では日本社会の置き去りになった人々が描かれる。その形は一見すればいびつであるが、そこにつながりは確かにある。それが家族として、集団として確かに成り立っていた瞬間があるのだ。その姿は時にほほえましく、生活感にあふれ、そして独特の幸福感を生む。しかしながら、それにはいつか終わりは来るのだ。
既存の価値観、基準というのは確かにあり、それは決して間違ってはいない。今作で池脇千鶴が安藤サクラに言うセリフや、今作の素となった年金不正受給者を断罪する人々の意見は間違ってはいないのだろうが、それだけが一つの答えではない、是枝監督が決してジャッジをしないように、全てあなたたちの基準で決められるものだけじゃないよということなのだと思う。
今作が上映されて批判的なメッセージがSNSで大量にあがったり、何かを断罪したり決めつける人々を見るたびに、寛容でない息苦しさを感じる。そもそも映画は自由な物じゃなかったのか、決してマイノリティを批判するような表現ではないのだ。話はずれてしまったが、今の数々の問題の中でタイムリーな作品だとも思う。俳優陣の演技はもちろん素晴らしく、見終わって考えさせられるとともに、どこか隅に見つけた輝きを見るような瞬間がある映画だと思う。素晴らしかった。
