はなこたちゃん

万引き家族のはなこたちゃんのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0
血の繋がりの無い家族が浜辺で戯れる時、命あるものの輝きを愛おしみながら、死期を悟ったかのように力なく、けれど穏やかに彼方を見つめるその表情…
ああ…やっぱり樹木希林さんは凄い人だった。゚(。pдq。)゚。

祥太が万引きに失敗した事から、この疑似家族の素性が明らかになるのだけれど…

世間から忘れ去られた様な古ぼけた薄汚い家で身を寄せ合いながら、彼等なりに精一杯の知恵で生活を凌いではいるものの、
貧困ゆえ、幼い2人の子供たちは教育を受けられないばかりか、犯罪に加担させられているという…結局虐待から逃れられない現状

「子どもに万引きさせて罪悪感はないの?」
という取調官の質問に、
「だって、他に教えられることがないから」
リリー・フランキーさん演じる柴田治なる人の、この言葉に、胸が締め付けられました。

貧困とか児童虐待とか教育の格差問題とか、こんなにも悲しい現実に対して為すすべがない様な、
根深い負の連鎖に絶望的で居た堪れない気持ちです


この作品で、上手いなと思ったのが、
メインの初江達疑似家族と亜紀の実家(初江の元夫の息子夫婦の家)との対比!

初江達の家族は文字通り血の繋がりのない、家族に恵まれなかった人達が肩を寄せ合って家族になろうとしているのだけれど、
一方亜紀の本当の家族も、小綺麗な戸建て住宅に住み、社会的地位や知性もありそうな父親と美しい奥さんに可愛い娘という一見幸せそうな家族ではあるが、
血こそ繋がってはいるものの、「家族」を取り繕っている様なぎこちなさで、全く家族の温もりを感じないという不思議。
ほんの短いシーンだったのに、森口瑤子さんが発した「パパが寂しがってて…」という台詞が、妙に上辺だけの明るさで、空々しく感じて哀しい印象を受けました。

この対比があってこそ、
罪を一身に背負って服役した信代が
(服役しても)「お釣りがくるくらい幸せだったから」
の台詞が効いてくるのです❗️
「家族」って一体何⁉️と考えさせられる…上手いな〜

それにしても安藤サクラさんの本作の圧巻の演技と存在感にはいたく感銘を受けました
素麺の啜り方やラムネ飲んだ後のゲップとかもう計算されつくしている程だし、どのシーンをとっても一寸の無駄も隙もない演技で言葉になりません
本当に素晴らしい役者さんです

少ないシーンながら強烈な印象を残す
池松壮亮さん柄本明さん池脇千鶴さん高良健吾さんも凄いです

リリー・フランキーさんは言わずもがなですし、松岡茉優さんも素晴らしかったです(๑・̑◡・̑๑)

作品の内容もキャストも改めて、極上で豪華ですね(๑˃̵ᴗ˂̵)


駄菓子屋の店主に
「妹にはやらせるなよ」と窘められたことで、
社会の善悪を理解して、自身が「スイミー」の様に疑似家族と決別し自らの意志で人生を歩き始めるという前半とは見紛うほど逞しく成長した祥太を見事に演じた城桧吏君!
これだけのスペシャルなキャストの中にあって、本当に素晴らしい演技力でした👏

まさに、祥太の様な存在がこの貧困や教育格差、児童虐待といった社会問題を改善し得る存在となって欲しいと感じました。


そして重要なラストカット
再びベランダで1人遊びをしている寂しそうなりんちゃんの姿が…
貧困や虐待、育児放棄が生易しい問題ではない事を改めて突き付けられ
本当に胸が痛いし、自分の無力さを痛感するのだけれど、
愛される事を知ったりんちゃんのあの視線の先(未来)には、きっと希望が見えているはずだと願いたいです