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彼が愛したケーキ職人のesのネタバレレビュー・内容・結末

彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

監督の知人の話に着想を得て作られた作品。

愛する男が何故死んだのか知るために不倫相手が本妻の元へ行き、彼の生きた空間に入り込んでいく。というプロットだけを見るとかなりドロドロしているのにストーリーはドイツ菓子のように素朴で優しい味わい。

ドイツとイスラエル(ユダヤ人)の軋轢や宗教的な隔たりというマクロシステムで起こる問題に対して、個人の良心により折り合いをつけるシーンが多い。
ユダヤ教では否定されているにも関わらず、何故イスラエルで差別禁止法や同性パートナーシップ法などによりLGBTQ+の権利が認められるようになったのかが窺える。
オーレンの母親とトーマスのシーンが印象的。きっと父親譲りの厳格な兄と、母親譲りの柔軟な弟だったのだろうなと思わせる。あの母親のように愛する人間が愛した人達を受け入れる寛容さがあれば、世界はもう少し優しくなれると思う。

美味しそうなケーキが沢山出てくるのに、ほろ苦いコーヒーを飲んだような気分になる作品だった。
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