yohey

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのyoheyのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

待ちに待ったタランティーノ作品!!
リアルタイムの劇場で観られるのも今作いれてあと2作か…。寂しい。

割りと熱量多めで。悪しからず。

まずアメリカ国民なら共通認識できるであろうシャロン・テート事件を知っているのといないとでは、この映画の持つ特有の緊張感を存分に味わえない。
それほどにこの事件は物語の核となる部分であり、タランティーノ流の魔法にかかる原因となる。

2時間半もの作品を30分程にしか感じさせない(個人的に)理由はいくつかあって
これは鑑賞後に気づくことになるが、
今回タランティーノの代名詞といえる、本筋とは関係のない会話劇が8割を占める。それを飽きさせないのが言わずもがな主演の2人。間違いないもの。2人がスクリーンに映るそれだけで満足。
そんな平凡な時間の中、前述にも書いた"魔法にかかっている人"たちは、
おおよそ向かうであろう結末にどう向かうのか、いじらしくも緊張を煽られ、
この均衡はいつ破られるの?タラちゃんどう魅せてくるの?!と。
69年のハリウッドの情景と出演者を堪能してると
ついに、というより正確にはいつのまにか(これは後でも触れるが)ラストシーンを迎えていた。
タランティーノのもう一つの代名詞、バイオレンスが始まるのだ。
ここにきてやっとタランティーノ節が完成した!と興奮も束の間、一抹の違和感…
これだよ、これ〜と、
あとはマンソンファミリーが仕返しに来てまたバイオレンスの始まりじゃろ〜とニヤニヤして次の展開を待つが、身構えた僕にかかっていた魔法は唐突に解けた。
そして違和感の正体がわかる、タイトルクレジットが出てエンドロールなのだ。
映画が終わったことを理解するのに数秒かかった。期待していた、というより多分誰もが予想していた結末を迎えず、気づけば映画が終わっていた。
魔法が解けたことを気付かせてあげる為かのようにしばらく続く最後の場面。

頭をよぎったのは、漫画BLEACHの藍染惣右介のあの名言よろしく、
「一体いつからー この映画がノンフィクションだと錯覚していた」と斬魄刀を片手にタランティーノがポツリと。
言ったとか、言わなかったとか。
まさにシャロン・テートのあの事件を知っている者の心理を逆手にとったファンタジー仕上げ。
お見事!と言うまでには時間がかかったが、言わざるを得ない。
自分のスタイルを一貫して作られた9作品目だからこそこの魔法が生まれ、
タランティーノ作品を好きであればこそ、この魔法はより強くかかる気がする。
そしてそれは、物足りなさと大満足の境目が限りなく紙一重に近いという意味も含む。

60年代のハリウッドや映画、俳優などほぼ知らないに等しいが、確かに伝わるタランティーノの映画愛と
シャロン・テートの墓石にそっと花を添えたような優しさをこの映画から感じた。
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