ピュンピュン丸

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

4.3
タランティーノ監督の映画のなかでは1番好きかもしれない。伏線回収は綺麗に決まるものの、さしたる起承転結がある映画ではない。

しかし、善良な、峠を越えたスター俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とそのスタントマン、クリフ(ブラッド・ピット)の日常を描くことで、見事に1969年当時の雰囲気を浮き彫りにしている。主役は、リックでもクリフでもなく、まさにその『時代』なんだと思う。

時代とはなんだろうか?

ハリウッドの道路一つ隔てたこちらとあちらに、かたや時代の寵児、ロマン・ポランスキー監督とシャロンが、そして反対側にはかつてのスターで既に時代に追い越されたスーパースター、リック・ダルトンが暮らしているのだ。

ディカプリオは、かつてのスターで、そのプライドはあるものの、スター気取りで周囲を困らすようなことはしない、そして影で傷ついたり、悩んでいる姿に非常に好感がもてるリックという男を、どこかコミカルに、しかし繊細に演じている。

そしてブラピは、この映画ではスタントという配役通りに、スターを演じるディカプリオを立てる地味な感じに見えるが、なかなかどうして、結局めちゃくちゃカッコよかった。クライマックスはもちろんだが、自分のお気に入りは、リックに頼まれて屋根の上のテレビのアンテナを修理しているときのブラピの演技。

だが、不思議なことに、一番印象に残っているのは、ヒッピーたちが車を止めて乗せてもらおうとしている姿で、とくにクリフに車に乗せてもらう少女の屈託のない笑顔が忘れられない。

その他にいくつか…。
子役の女の子の演技談議に素直に聞き役になっているリック・ダルトンが素敵だ。

それと、アル・パチーノがシブい。(^^)