ノラネコの呑んで観るシネマ

ヒトラーを欺いた黄色い星のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ヒトラーを欺いた黄色い星(2017年製作の映画)
4.2
大半のユダヤ人が絶滅収容所に送られた後も、ベルリンに潜伏し終戦まで生き抜いた四人のユダヤ人を、インタビューと再現ドラマで描くドキュメンタリー。
潜伏ユダヤ人の視点で描かれた作品は珍しく、潜伏下での暮らしが詳しく語られ、非常に興味深い。
潜伏の方法は皆異なる。
文書偽造の才能を開花させ、偽IDで一儲けしてしまう者、ドイツ軍将校の家政婦に収まる者、キリスト教徒の義父に助けられる者、たまたま知り合ったドイツ新兵の母と親しくなる者。
元々見た目でそんなに異なる訳じゃないので、結構道はあるんだな。
それに表立っては言えないものの、反ナチスのドイツ人も決して少なくはない。
彼らの助けを借りながら、隠れ家を転々とするサバイバルは、それぞれが一本の映画になりそうな濃密さだ。
サブキャラクターも面白くて、彼らのその後が知りたくなる。
しかし、ベルリン潜伏を選んだユダヤ人は7000人。
そのうち終戦まで生き抜いたのはわずか1500人。
8割の5500人は命を落としたということだから、四人の笑顔に「良かったね」と思うと同時に心が痛い。
見応えある作品だった。