genarowlands

グッバイ、リチャード!のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

グッバイ、リチャード!(2018年製作の映画)
4.2
感情移入し、リチャードの決意と言葉すべてにイエスと答えていた。タバコを吸わないのに、突然、肺がんで余命宣告を受けた大学教授リチャード(ジョニー・デップ)は、治療することなく、残り半年を自分らしく生きようと決意する。家庭、職場で、本音で通すと、人間関係が劇的に変わっていく。相手も本音で答える。本音で答える関係の者だけが残っていく。

研ぎ澄まされた人生訓がリチャードの奥の方から言葉として表れてくる。そして言動一致。周りに合わせない、自分を生きること。観ていて気持ちよかった。会話のセンスの良さが抜きん出ている。(コメディタッチです)

監督のプロフィールが英語版wikipediaでもわからなかった。脚本も書いている。誰か匿名の作品なのか、遺作なのか、わからない。それだけリアルな心理描写で、死を前にした本心をここまで表せるのは、体験した人でないとわからないのではないか。



以下、自分語り(長いのでスルーしてください)

実は、先週、定期健診のレントゲン結果でかなり大きい影があり、CTの結果が出るまで(⇒病症ではなかったので大丈夫でした)、リチャードと同じく、治療せず、残された時間をどう生きるかを考えていました。考えを巡らせた結果、私の希望は日常を平常心で生き続けること。仕事もぎりぎりまで続けたい。かなり自由に好きなことをしてきたから、やり残したこともなく、欲もなく、若い頃に好き勝手したおかげだなと、人生を肯定的にとらえられました。リチャードは家庭と大学組織に縛られていたようですが、すでに半分、仙人モードに入っている私は、社会からフェイドアウトしつつあり、しがらみ無し。気楽なものです。生きている人より、死者の方に親しい人が多く、そちらへ行くことに心残りも恐怖もありません。

生きることをあきらめないとか、病と闘うなんて、生にしがみついて病状に一喜一憂していく生き方は、もうこの年だと不要で苦痛です。

死を受け入れることは今ある生を受け入れること。

心改め、これから聖人になれるわけでもないし、人生の一発逆転狙うとか(黒澤の「生きる」みたいに)、人生を書き換える貪欲さもなく、今まで生きてきたように死んでいくのだと、悪足掻きはしたくなく、ふつうに今を生きることを選びたいです。ぎりぎりまで。

尊敬している同窓生が死ぎりぎりまで書物を書き、平常心を保ち、魂、死、私を考えていたので、彼女の本を手にとりました。

貴重な体験でした。この先にまた体験することになるのでしょうが、良い予行練習でした。


安定した生き方だったリチャードが選んだ道に拍手。初めての冒険。

冒険の多かった私はその逆でいつもの道へ。
genarowlands

genarowlands