アァーーーーーー

INSTRUMENT フガジ:インストゥルメントのアァーーーーーーのレビュー・感想・評価

4.7
現代の日本ではすっかり音楽番組も少なくなり、所謂「ロック」という音楽ジャンルの代表といえば、または一般的に認知されているロックバンドがb'zという何ともお粗末な文化形成の上で、日々限られた情報のみがテレビやメディアなど公共の電波を通じて伝達されている。
その形成を促したのは何にしても日本人そのものの習性で、
常に他人の目を気にして右にならえ。
そうしなければイジメの対象になるぞ、
という恐怖感に苛まれている。
より多くの他人と話を合わせる為、より簡易的なコンテンツを求め、そこにお金が集まる。
その状況で出来上がった精神は、探究心の中に可能な限りの選択肢をリスナーに提供してきた音楽雑誌や、新たな表現方法を提示するアーティストを紹介する音楽番組なども軒並み廃刊や打ち切りに追い込む要因となり、なによりも容姿端麗で、政治的な小難しいメッセージ性ではなく、「明るく元気づけられる音楽」を選んで来た結果のひとつであると言えよう。
もちろんそこには人口の差やインターネットの普及という大きな要因も勿論だが、「反抗」の象徴でもあるロックが世間から煙たがれた結果、その影響が社会貢献などに直結する事なく黙殺され、まさにロック本来が持っていた「意義」を失ってしまったと言えよう。
その反動が現代ではヒップホップに取って代わった訳ではあるが。

もしこの駄文を読んでいる貴方が、このドキュメンタリーの主人公でもあるフガジと言うバンドを知らないのであれば、この機会に一度チェックしてほしいと心から願う。
「こんなバンドがいたのか」
となる事、必須である。

彼らは必要以上の情報を遮断し、メディアにも極力顔を出さず、自分たちのグッズも作らず、売らない。
徹底した反商業。
それでも土地柄や土壌の広さ、ロックという文化をつくった国、という日本では考えられない様な歴史が築き上げたアメリカ巨大地下ネットワークをより更に強固にし、インディー規模ながら世界的に有名になったバンドだ。
その何にも頼らず自分達で考えて行動する姿は今もバンドの在り方として影響を与えていると思う。
「それが出来ない?フガジがいるじゃないか?」と。

このドキュメンタリーは発売当初、日本においてごく小規模の輸入専門レコード屋でしか売られてなく、また当然の如く字幕も付けられていなかった訳で。
またフガジというバンド自体が雑誌や口コミ程度の僅かな情報しか入ってこなかったので、その映像史料は日本において帰国子女や通訳の元からクチコミされ伝説の如く語られるしかなかったが、様々な憶測や思惑の元、バンドは2001年頃を機に活動休止。
その後、長く険しい道のりが推測出来るほど様々な方々の尽力のもと字幕付きの本作が2018年に異例の公開。
やっとまことしやかに憶測や妄想でしか語られ続けて来なかった海外のシーンとの時差が約20年の歳月を経て埋まる。

映像は監督視点というよりバンド主導で作られた物だと思うが、面白いことにリスナー側の否定的な意見が沢山盛り込まれていて、その活動スタンス故に様々な誹謗中傷とも戦ってきた背景が見え隠れするのが意外で素晴らしい。
アァーーーーーー

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