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バイスのpikaのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
4.0
「マネーショート」が小難しい話をわかりやすくコミカルに見せていて感心しつつもあまり好きではなかったので今作もスルーしかけたんだけどテーマに興味があるかどうかの違いなのか手法は同系統なのにこれは面白かった。狙いすぎな部分も映画のテンションに乗れていたからかスッと受け入れられたし普通に楽しかった。
キャストが近年社会派映画によく出てくる布陣過ぎて若干の忌避感はあったがさすがというか演技の良さに圧倒されてだからこそのキャスティングだよなと手の平返して楽しんだ。メイクで寄せるだけでなく加齢による仕草や経験による立ち居振る舞いの変化が自然で説得力がふんだんにあり凄く良かった。クリスチャン・ベールは役者かどうかが頭から消えてしまうくらい人物として生きて動いているレベルだったし、エイミー・アダムスの変化の表現も凄くて、加齢メイクを見なくても一瞬の仕草で数年、数十年経過していることが見て取れるくらい良かった。
中間にエンドロールもどきを入れたりエンドタイトル間のメタ的なネタなどコメディに振り切った演出が愉快。シェイクスピアのくだりは好みではないが。
チェイニーに寄り添って見せる構成にしつつ淡々と事実を提示していく姿勢が面白い。家族のストーリーが良い潤滑剤になっていて政治面とパーソナルな面を交互に見せているからラストの展開とカメラに向かって話すシーンに効いてくる。
ただそのラストのカッティングと字幕が何度も出てきてしつこいところは難。それまでの魅力がどこへ消えたのかと驚くくらいいまいちだった。ナレーターのくだりも。
総体的には非常に満足。こういう映画はこれからもっと作られて欲しいですね。
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