ろく

覗かれる人妻 シュレーディンガーの女のろくのレビュー・感想・評価

4.2
これはすごい。「悦楽交差点」でも見れた掃き溜めの資本論だよ。観る/観られるという観念を搾取する/されるという概念に敷衍すれば、どの登場人物も「搾取される」ものなんだよ。だから自分は「搾取するもの」に回りたがる。

ただこれだとマルクス的な一方通行の資本論。城定が凄いのはそこで関係性が逆転すること。搾取する側だったデリヘル嬢は相手の男が金がないと知ると怒りながらも1000円を投げ捨て「これで死ぬんじゃねーぞ」と渡す。男にのぞかれたあやみ旬果はその男に一方的に暴力をふるいながらもなぜか裸で一緒にそうめんを食べ、さらには縁側でスイカも食べる(これも裸で)。

そう、世界は搾取する側→される側の一方通行ではないはずなんだ。そこには関係性がある。そしてその関係性の復活こそ城定が狙ったものではないのか。そう自分が思ったときに涙が出てしまった(ピンク映画なのに)。なぜ立ち位置をみな決めたがるのか、そこは自由でいいのじゃないか。そう言われたような気がしてぐっと勇気が湧いてしまった(ピンク映画なのに)。

やはり人間賛歌なんだよ、城定の作品は。そんなに単純じゃないんだよ、世界は。そんな優しさにあふれている。ここまで褒めていいのか、ピンク映画なのにと思ったけどそんなの関係ねえぞ。

裸でそうめんを食べ、裸でスイカを食べ、裸で眠る。そのシーンになんとも言えない温かさを感じた。それは最後のノックの音でほほ笑むあやみ旬果を見てさらにだ。
ろく

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