フェミ研ゼミ

生きてるだけで、愛。のフェミ研ゼミのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
5.0
意味のわからない美しいもの
が見たいって思ったから。

一枚ずつ服を脱ぎながら疾走するヤスコとそれを一枚ずつ拾いながら追いかける津奈木に、真冬に裸で屋上から夜空見上げるヤスコ。
納得できる言葉も美しい理由なんて何一つないんだけど、
わたしにはそのシーンが完全に完璧だったんだよ。
ヤスコと津奈木の二人の意味わかんない関係も、ヤスコの意味わかんない衝動も、なんで裸で、冬で、屋上で、なにも納得させられるような説明なんて出来ないけど私には完璧に理解できてそれだけで泣けてしまったんだよ。


これは同じヤスコという名前のわたし自身の物語なのかとも思えてしまって、あのとき辛かったなあとか、でも津奈木みたいな人がいて、助かったなあ。でも、ヤスコも映画のヤスコが映画の津奈木に怒ったみたいに、私と津奈木みたいな人も疲れていたなあ。

鬱の趣里ちゃんはとっても美しかった。
なにもかもどうでもいいはずなのに、美しさのカケラがドンドン輝いて困った。
綺麗になりたい、美味しもの食べたい、素敵な友達と楽しい場所に行きたいステキな時を過ごしたいとか、そんなこと考えられない時、人はどうしてこんなに輝いてしまうんだろう。
磨かれた美しさとは別のなにかもっと宇宙的な、真っ暗な空みたいな暗いのか眩しいのかわからない。けど鋭く美しかった。

映画の中のヤスコみたい無茶苦茶だったあの時のポートレートを見るとすごくきれいでびっくりする。人の暗い美しさを知っていたのかなあ。
なんで趣里ちゃんはその美しさを演じられたんだろう。あの美しさ。
石が暗闇で光るような、素晴らしかった。

意味のわからない美しいものってもしかしてこういうことだったのかもしれないなあ。って今思ってみた。
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