平成2年の男

生きてるだけで、愛。の平成2年の男のレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.6
・オープニングからして普通じゃないと思った。この脚本を書いたやつは何者?と、そのセンスに嫉妬した。視聴後に芥川賞作家の一作が原作であると知り、納得した。

・原作を読んだ。びっくりした。あらゆる点で原作より映画が上回っていた。オープニングのお母さんが裸で踊るシーン、「見つかっちゃうの」というセリフ、ツナキの物語の造形、これらは全部原作にない要素である。原作も悪い作品ではない。ただ、それを俎上に乗せて、良いところだけを切り取り、隙間にあらゆる芸術性と人生の濃淡を詰め込んだ本作のクオリティが凄すぎた。原作を超えた稀有な例。

・セリフのセンスが凄まじい。多くの脚本家はセリフを狙いすぎて気取った印象になるのだが、それがない。主演2人の演技力がセリフの凄みに輪をかけている。

・AHDHと躁鬱の併発なんて、想像するだけで生きづらそう。生きるだけで疲れるよね。見つかっちゃうんだよね、うん。噛み合わないんだよね、とてもよくわかるよ。