このレビューはネタバレを含みます
心に闇を抱えて社会で生きられない主人公の寧子と、面倒臭いことは全て遠巻きにおいて考えることをも放棄するようなある種現代っ子の津奈木。
はじめは見ていてすごい嫌な気分になるような主人公なんだけど、映画が進むにつれて寧子の気持ちにじんわりと共感していく部分があるから不思議。
人間の誰しもが持つ暗い部分。そこだけを凝縮したような存在が、寧子として描かれているのかも。
冒頭からラストまで寧子から目が離せない。次にどんなことを言うのか、どんなことをするのか、予測できなくて、気付いたら映画の世界に引き込まれてた！
寧子がカフェバーで働き出した時に、
今日からよろしくねってメモを同僚にもらって
お姉ちゃんに仕事決まったよって連絡して
バイトの人たちは器が広い優しい人たちなんだって津奈木に話して
働く上で困ってることを津奈木に相談して
寧子の表情とかがどんどん変わっていくシーンがとても嬉しくて、
寧子と一緒に喜んだり
うまく出来なくて悔しく思ったりした。
オーナーの奥さんから、もう家族みたいなものじゃないって言われて、寧子が
わたしはまだ大丈夫。今度こそ。
そう思ったシーンは胸が熱くなって
飛行機で観てたのに涙がぽろぽろでてきた。
それなのに、ウォシュレットの話をした時、全てが変わってしまった。
寧子が、「みんなに見抜かれちゃう」って感じる感情がすごく切ない。
寧子は、誰かに必要とされたくて
ほんとはちゃんと真っ当に生きていきたいと望んでいることが浮き彫りになっていたから、またゼロからになってしまったことがとても苦しかった。
何も考えずいつもその場しのぎで生きてきた津奈木が、最後自分の意思で雑誌の記事を変えるシーン、とても好き。
次の会社ではやりたかった物書きの仕事ができたらいいね。
真面目で、自分の意思を持って動くことを学んだ津奈木ならきっと大丈夫だね。
屋上のシーン、そして停電した部屋で交わす最後の言葉。
「俺はもっとお前をわかりたかったよ」
「わたしたちが分かり合えたのなんて、ほんの一瞬だったよ」
それでも、ほんの一瞬でも、お互いにわかりあえた瞬間があった。
自分じゃない誰かに、自分の本音を、思ってることを、ちゃんと伝えられた。
この事実がきっと、これからを生きていくふたりを静かに支えてくれる。
▼屋上のシーンの心に残った台詞
いいな〜、津奈木は。
わたしと別れられて。
わたしは、わたしとは別れられないんだよ。
ホント、わたしって疲れるな〜
生きてるだけで、ほんと、疲れる
たかがウォシュレットだよ？
たかがウォシュレットで、全部ダメにしちゃった
津奈木はさすごい誤解してると思うんだけど
わたしを怒らせない1番の方法はね
とりあえず頷いてやり過ごすんじゃなくて
わたしが頭使うのと同じくらい考えて喋って、
わたしがエネルギー使うのと同じくらい振り回されろってことなんだよね
