かすとり体力

愛しのアイリーンのかすとり体力のレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
3.9
吉田恵輔監督作品。
私、本作を同監督の結構初期の作品と勘違いしていたけれど、比較的新しいのな。
『空白』の2つ前か。

本作を鑑賞して改めて思ったけど、やっぱ吉田監督すげぇわ。

「人間のイヤなところを炙り出す」っていう作品は星の数ほどあれど、同監督作品はそれをとにかくパンチ力重ためでやってくる。

それも、一発KO的なパンチというよりも、みぞおちのあたりに激烈重たい一撃を叩き込まれ、声も出せずに悶絶・・的なや〜つ。

『ヒメアノ~ル』『犬猿』『空白』と来て直近は『神は見返りを求める』。
どれも人間性の抉り方がエグい・・・。

「42歳になる農家の岩男はいまだ独身で、年老いた母と認知症の父と暮らしていた。彼は大失恋をきっかけに、貯金していた300万円をはたいてフィリピンでの嫁探しツアーに参加する。彼は、そこで出会ったアイリーンを連れて帰郷してみると、父はすでに亡くなっていて、実家はその葬儀の最中だった・・・」というあらすじからして、もう少しコミカルなタッチかと思いきや、冒頭から結構重い!

とにかくあらゆるタイプの人間のイヤさを散りばめながら物語が展開していき、気付いたらストーリーが狂気的なドライブを始め、最終着地点は冒頭では思いも寄らなかったところに。

ということで、お話としてはテンポも良く、普通に面白い(という表現が適切かはあるけど)んだけれど、やっぱこの狂気の物語をしっかり支えていたのが主演二人、岩男を演じた安田顕と、アイリーンを演じたナッツ・シトイ。

もうナッツ・シトイ氏の存在感とか説得力しかないし、あとやはり、安田顕の演技はなんぞこれ。。こんな役、この方以外に成立させらる人おるんかいな。

私、特段安田顕氏に何の思い入れも持ってこなかったけど、本作で大ファンというか、敬服したようなところがあります。ほんと凄かった。

ということで、重たいパンチをくらって良い方には強くお勧め。

あと、吉田監督、今過去一ヘビーな作品を準備中という噂を聞いた。『空白』を超えるパンチ力があったら死者がでるよ。
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