レビュー王子

来るのレビュー王子のネタバレレビュー・内容・結末

来る(2018年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

登場人物、人物の関係、怪異(アレ)、ストーリー、どれにも掴まれないまま終わってしまいました。複数人が書いたアンソロジーを、ひとりの脚本家が力技で結びつけてるような…夢見をしているような…。


【いちばん怖かったところ】
田原のイクメンブログが死んだあとも更新されていたところ。日常性の延長線上にあるホラーがいちばん怖くて好きです。


【霊能力の大集合】
終盤は霊能力が集められて「アレ」を迎え撃つことになり、儀式めいたことをしているところはオーケストラめいていておもしろかったです。結果的にあまり意味がなかったのは、さすがに喜劇すぎるかもしれませんが。


【怪異について何もわからない】
怪異について説明せず「アレ」で済ませるのが逆におもしろいという、というところについていけませんでした。田原の実家と関係がありそうですが、よくわかりませんでした。怪異を縦軸にしたくて見ていたのが間違いでした。せめて田原家が昔したことのせいで土着の怪異に呪われてて、その怪異は「子ども」に対して〜みたいなテイストぐらいは欲しかったです。


【薄い群像の喜劇性】
どの登場人物がどうということもなく、みんな一辺倒に薄く、薄いひとたち同士のミスコミュニケーションが長いこと描かれます。ここはある種の見どころというか、とくに何も持っていないキャラクター同士が、薄く薄く、ずっとミスコミュニケーションしているのが喜劇っぽくておもしろかったです。

第二部の、とってつけたような不倫シーン(?)も薄すぎて、「そうだったの!?」とかならず、「うん、まあ」ぐらいで、なんのために挿入されたシーンなのかもわからず…。エンタメでよくある中だるみ解消とかなんでしょうか。


【掘り下げない美学???】
怪異とか、イクメン気取りとか、ネグレクトとか、流産とか、掘り下げてよと思う風呂敷はたくさん広がってますが、絶対に掘り下げないぞ、という意思を感じます。


【社会風刺???】
社会について描いていそうな感じは多少あります

•イクメン愛妻家気取りで賞味期限切れの成功体験にすがって父親になれないままブログに現実逃避する男
•重度のネグレクトや虐待をされてきたうえで葛藤なくライトな玉の輿で家庭をつくって子どもを産んで失敗するスーパーマーケット勤務の女
•成功者気取りの軽薄男の手に入れたもののお下がりを奪って「上」にいる気になっているマウント男
•それっぽいことだけ言って役に立たない霊能力の群れ
•「来る」というタイトルで関心をひいて結局たいして何も「来ない」という現代広告のダウトフルな手口

これらの風刺になっているような気もしました。
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