うえの

来るのうえののレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
3.7
幸せな新婚生活を送る田原秀樹のもとに「千紗さんの件で」と会社に訪れた謎の訪問者。
それをきっかけに起きた後輩の死を始めとする不可解な出来事により、妻と娘の身を案じ始めた夫の秀樹は友人のツテで霊媒師の真琴とフリーライターの野崎を紹介してもらう。
正体も名前もわからない“アレ”の脅威に立ち向かう人々を描いたホラー映画。

正体不明の何かが襲ってくるホラー映画と予想し構えて鑑賞したが、どちらかというと人間の黒い部分や卑しい部分などの負の面によって事態が悪化したような描き方をしていて、ある意味人間の方が怖いと思わせるタイプの作品だった。
メインの田原夫妻の腹の内を序盤、中盤にかけて2段階で明かし、2回の胸糞悪さを味わわせてくる笑。
特に妻夫木聡演じた夫、秀樹のクズ具合は目に余るものだった。
イクメンパパを自称する為のブログ更新にイクメンパパ集会、会社でのイクメンっぷりアピールに反比例して、ブログ更新に追われ育児の手伝いは二の次、娘の怪我もブログのネタと言わんばかりに使い、終いにはたかだか1人産んだくらいで偉そうにと妻の香奈に対してマウントを取り始めるクズっぷり。
そんな秀樹を演じる妻夫木聡がまあ上手くて似合う笑。
近年の彼の役所はこういうクズ男が多い気がする笑。

また今作1番の存在感のあるキャラクターは中盤から終盤にかけて登場する日本最強の霊媒師として知られる真琴の姉、比嘉琴子こと松たか子である。
終始冷静沈着な対応で全てを見透かした動きを取り、団地一帯を封鎖し日本中から凄腕の霊能力者を集めた一大除霊作業をおっぱじめるクライマックスを牽引する存在で彼女の登場で作風がガラッと変わるのがとても面白い。
霊能力を持たない野崎が終盤にかけて真琴と千紗を救いたい一心で除霊の中心地に来てしまい、オタオタしている彼を目の前にしてまさかの渾身の右フックをお見舞いした件はホラー映画ながら爆笑しそうになってしまった笑。

色々と粗はあるかもしれないが、一応ホラーの括りだし、「アレ」の正体などはボヤかして終えるのは正解なのかなとは思った。
原作と違うという声もあるようだが、原作を知らない人間としては除霊エンターテイメント的な作品として割と満足できた。
中島監督の人間の醜さを描く表現力はやはりピカイチだなと感じた。
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