Inagaquilala

半世界のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

半世界(2018年製作の映画)
4.0
前作「エルネスト」では、やや物足りないものを感じていた阪本順治監督だが、この、オリジナル脚本でメガホンをとった作品では、実に味わい深いヒューマンドラマをつくりあげていた。主演は稲垣吾郎だが、彼が彼らしくない、田舎で炭焼き職人として淡々と暮らす主人公を好演している。最初に登場したときは、彼だと気づかぬくらい役柄に嵌っており、びっくりした。脇を固める長谷川博己、渋川清彦、池脇千鶴も素晴らしく、見事に彼らの演技が結晶した、密度の濃い空間が描かれている。

物語は、田舎で暮らす(三重県のどこか)稲垣と渋川のもとに、元自衛官で海外での活動経験のある長谷川が帰ってくることで始まる。3人は昔ながらの親友で、帰ってきても引きこもる長谷川をめぐり、ドラマが展開していく。それぞれの内面に深く切り込んだ描写が細密で、阪本監督のこの作品に対する本気度も感じられる。稲垣の妻役の池脇も、いつもながら素晴らしい演技だ。樹木希林の後を継ぐ名女優になる予感もする。阪本監督が表現しようとしている世界と、稲垣吾郎の役者としての力量を、あらためて認識した作品だ。第31回東京国際映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞した作品。
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