狂い始めたのか、最初から壊れていたのか…家族は祭壇に並べられた供物のように、与えられた役目をただ全うする。
のちに『ミッドサマー』を生み出すアリ・アスター監督のその奇才さがすでに色濃く見られるインデペンデント・ホラー。
残念ながら怖くはない。
少女の使い方と恐怖演出が肩透かし、王道オカルトとカルトを合わせた設定がどちらにも振り切れていない印象…でも、だからこそ意欲作に思える。
“Hereditary”という言葉の意味する何かに抗い翻弄される母の物語…もう少し深い解釈もあり得る。
劇中の人物と同じくらい鑑賞者側も「何が起きているのか分からない」作りによって、得体の知れない“不安”と“恐怖”が徐々に膨れ上がる。
“正統派ホラーの系譜”と呼ばれる所以はおそらくそこにもあって、それは『ミッドサマー』でさらに強烈に感じた。