このレビューはネタバレを含みます
原作小説をアニメーション化する際、様々な障壁を乗り越えなくてはいけない。ストーリーのどこを削るのか、原作ファンのイメージに忠実か、どの年齢層に狙いを定めるのか、挙げれば切りがない。その中でこの映画の1番優れている要素を挙げるとすれば、原作者と監督の感動値が図らずともシンクロしていたことだ。
監督はインタビューで、
「技術力が足りなくても感動値が高いと、そのイメージだけは頭の中で再現できるんです。」
と語っている。監督は風景、道具、現象、人物相関、どこにどう重心を置けば単なる頭の中の妄想ではなく、観客を巻き込んで感動させることができるか、明確な視点があるのだとひしひしと伝わってきた。
原作は未読だが、その情報量の多さが画面からも滲み出ている。きっとやむを得ず、添削したシーンも多々あるだろう。そこを凌駕するほどの秘めた力がこの映画にはある。原作者のこどもの頃の元風景と妄想からなるこの物語を、ここまで切なく、やるせなく、でも希望が持てるところに落としこめたこの作品は明らかに今年1番のダークホースだ。
物語自体もかなり、どストライクすぎる展開と着地の仕方だった。
アオヤマ君が研究を続け、世界の果てを見つけることができたとき、お姉さんともう一度会えるはずだっていう展開。泣かせにきてる。アオヤマ君の生きていく上での道しるべであり、お姉さんとの再開へ続く道がペンギン・ハイウェイ。ずるいわ。
謎は謎のままにすることへの美学は、より物語の深みを強める。ポップでキャッチーなビジュアルとは裏腹に、とんでもなくノスタルジーで重厚な心象風景を味わえた。
黙って原作読みます。