ノラネコの呑んで観るシネマ

私の人生なのにのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

私の人生なのに(2018年製作の映画)
4.3
これは素敵な小品。
知英演じる新体操選手の瑞穂が、不慮の病で下半身麻痺に。
前を向こうとしつつ壁を作ってしまう彼女の前に、幼馴染でストリートミュージシャンの稲葉友がふらりと現れる。
何の脈絡無く一緒に歌おうと誘う彼に反発しながら彼女の心は次第に動かされてゆく。
真っ直ぐな眼差しをした、二人のキャラクターが凄くいい。
一見対照的に見えて、その実傷を抱えた似た者同士。
「車椅子なのに、『走れ、走れ』なんて歌えない」という瑞穂に、彼がとても映画的な方法で反論し、彼女の壁のブレイクスルーのきっかけになるところが特に好き。
基本的に善意の人しか出てこないのだが、それぞれの善意のエクスプレッションは異なる。
それが瑞穂の中で咀嚼されて、リアクションとなりドラマを前に進める構造。
人生は色々失っていって苦しかったりするけれど、たまには楽しいこともある。
優しく背中を押してくれる佳作だ。
しかし知英は「レオン」の時も素晴らしかったが、進化が止まらないな。
外国出身で、ここまでナチュラルに日本語を使いこなした役者がいただろうか。
海外移民経験者としてはリスペクトしかないわ。
稲葉友はドライブ以外で初めて見た気がするけど、この役は絶妙だった。
ブログ記事:
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