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エヴァのtakのレビュー・感想・評価

エヴァ(2018年製作の映画)
3.2
他人の戯曲を自作だと偽って発表したベルトラン。出資者から第2作の催促がくるのを受け流しながら、のらりくらりと日々を送っていた。ある日、恋人の親が所有する別荘に、吹雪で立往生したカップルが忍び込んでくつろいでいるのに出くわす。そこで出会った娼婦エヴァに強く心を惹かれるベルトラン。彼女をモデルにして2作目を書こうと考えた彼はエヴァの元に通うが、逆に「入れあげないで」と冷たくあしらわれてしまう。エヴァとの関係を続けたいベルトランは、「友達なりたい」と持ちかけ、はぐらかしたエヴァも「旅行付き合ってもいいわ」と答えたり、押したり引いたりの二人の関係。ベルトランの婚約者カロリーヌも巻き込んで、絡み合った人間模様が描かれる。

エヴァが口にするひと言ひと言がベルトランの心に響き、彼はそれを戯曲の台詞にそのまま使ってしまいたいのだが、それを物語につむぎあげる術を残念ながら彼は身につけていない。自分にない魅力を身につけたエヴァに惹かれただけ。舞台の仕事のパートナーでもあるカロリーヌからも、次第に実力を見透かされそうになる。そりゃ、エヴァとも脚本遺してバスタブで死んだ老人とも重ねてきた人生のスキルが違いすぎる。ベルトランにまったく同情する気持ちにもなれないまま、ドラマは結末へと突っ走る。ラストシーンのイザベル・ユペールの眼差しの力。ベルトランを黙らせるだけでなく、銀幕のこっち側の僕らにも、この映画が彼女あってのものだと思い知らせる。

ギャスパー・ウリエル君は歳上女性に惹かれる役柄のイメージが僕にはある。きっと新人の頃の「かげろう」でエマニュエル・べアールの相手役だったのを、僕が妬ましく思っていたからだろう(笑)。それにブノワ・ジャコー監督は「マリー・アントワネットに別れを告げて」で、まさに憧れの存在に翻弄される若者を描いた人だから、この題材に起用されたことも納得。変に先入観もって映画観てはいかんと思いつつも、いろいろ映画観ていると、こういう予備知識が勝手なつながりを脳内に形作ってしまう。それは時に邪魔なことだけど、この映画に関しては僕の勝手なイメージを損なうことはなかったので、それほど退屈することもなくエンドロールを迎えられた。ただリシャール・ベリが演じた出資者が、エヴァと会ってどう感じたのかが読み取れないのは残念に思うのだけれど。

かわいそうな役柄だったカロリーヌを演じたジュリア・ロイ。ちょっと気になる。ジャコー監督の前作では脚本も書いた女優さんらしいから、この役柄は自然にも見えたのかな。
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